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子供講座:ケータイの仕組み(交換機編)

交換機とは
通信システムは端末と交換機とそれを結ぶ回線から構成する。ケータイの場合にはその回線が無線だ。今回はそもそも電話の仕組みを発明したグラハムベルと、電話の仕組み、そして交換機の昔と今、そして今後についてまとめてみたい。

アレクサンダー・グラハム・ベル
グラハム・ベルは電話を発明したことで知らる科学者だ。1847年3月3日生まれでだが、電話の実験に成功したのが1876年3月10日29歳の時だ。ベルよりも一回り年長のイライシャ・グレイ(1835年8月2日生まれ)も電話を研究していて特許を申請したが、残念ながら、ベルが2時間先行して特許を申請して認可されていた。
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(出典:Wiki、参考1)

ボストン大学を訪問する二人の日本人
グラハム・ベルは、電話の実験に従事していた当時はボストン大学の音声生理学の教授だった。電気通信技術に精通していたわけでもなかったので、技師のワトソンの協力を得て進めていた。そして、電話の第一声として、「ワトソン君、こちらに来てくれないか」と会話に成功した話は有名だ。そして、当時日露戦争講和に尽力した金子堅太郎と現東京芸術大学の初代学長の伊沢修二ボストン大学を訪問していてこのベルさんが開発した電話で話をしたという。英語だけでなく、日本語でも使えることを確認してベルさんも自信を持ったという(参考2)。

初期の交換機は手動
初期は送話器と受話器を電線で結ぶいわば糸電話のような構成だった。電気信号を増幅する増幅器が発明されて遠方でも電話をすることが可能となった。さらに複数の人と自由に通話をするために考案されたのが交換機だ。各端末は全て一つの装置(手動交換台)に接続し、オペレータが必要な端子と端子を接続することで任意の端末間での通話が可能となった。日本の国内通話の手動交換は1979年に終了したが、その当時の国際通話はまだまだオペレータ全盛時代だった。
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(出典:武蔵野市観光局、参考3)

最初の自動交換機はステップバイステップ方式
初期の電話機は、オペレータを呼び出す仕組みはあるが、ダイヤルもプッシュボタンもない。オペレータがいなくても直接、相手を呼び出せる仕組みが求められ、このために発明されたのが回転ダイヤル式の電話機とステップバイステップ式の交換機だ。例えば、ある交換機に100台の端末が接続しているとした時に、端末34を呼び出したい時には「3」「4」をダイヤルすると、3個のダイヤルパルスと4個のダイヤルパルスが送信される。そのダイヤルパルスを受信した交換機は端末34を呼び出すという仕組みだ。
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(出典:宮崎技術研究所、参考4)

クロスバー式交換機
ステップバイステップ方式の交換機は、ダイヤルパルスを受信しながら接続相手を切り替えていく。次に発明されたのがクロスバー式だ。初めて実用化されたのは1926年でスウェーデンエリクソン製だ。国内では初めて実用化されたのは1955年で群馬の高崎局に米国製が試験導入された。その翌年には国産式が開発され、全国の電話局に順次配備された。自分が誕生した1957年の当時にはまだまだ電話を家に設置している人は少なかった。クロスバーの仕組みは、例えば下の図であれば、入力0と出力3のスイッチをONにすることで、入力0と出力3を接続する。同時に入力1と出力1、入力2と出力0も接続されるという原理だ。

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(出典:EMORY COLLEGE、参考5)

交換機の進化
コンピュータの進化に伴って従来のアナログ方式(ステップバイステップ式やクロスバー式)からデジタル方式に進化する。信号方式も、ダイヤル方式からプッシュボタンによるダイヤルトーン方式に進化し、その後共通線信号方式に進化する。音声はアナログ信号だが、これもPCM技術により64kbpsのデジタル信号に変換される。

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(出典:電話が繋がる仕組み、参考6)

音声のデジタル化の原理
通信の世界で音声は64kbpsのデジタル信号に変換される。これはどういうことかというと、3つのステップがある。まず、最初は標本化。音声信号は300Hzから3400Hzの帯域の信号なので、これの倍の周波数=8kHzでサンプリングする。次は量子化。これは波形の大きさを8bitで示す。このため、8bit x 8kHz => 64kbit/sec(kbps)の信号となる。余談になるが、ISDNではこの64kbpsの信号で伝送したので高品質だった。初期のIP電話ではこれを8kbpsやもっと低速度の信号に変換(圧縮)したので品質が悪かったが、現在のIP電話は64kbpsのまま伝送するので高品質だ。携帯電話の世界では、より高品質なVoLTEも実用化されているが、詳細は別途にする。
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(出典:ネットワークエンジニアとして、参考7)

共通線信号方式
アナログ方式の交換機の時代には、相手の番号はダイヤルパルスやプッシュボタン信号(DTMF=Dial Tone Multi Frequency)を通話回線を通じて送信していた。しかし、電子式交換機が導入されるようになると信号情報のみを専用に伝送する方式、共通線信号方式が採用されるようになった。共通線信号方式は、ITU-Tが1977年にNo.6共通線信号方式として国際標準化された。その後、パケット交換方式の技術を活用し、より高度化したNo.7共通線信号方式が1980年に国際標準化された。

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(出典:国際電話最前線、参考8)

まとめ
グラハム・ベルが電話の仕組みを発明してから140年が経過している。その間、コンピュータの発展に支えられて交換機も伝送路も端末も成長した。そして、固定電話の仕組みをベースに無線通信の技術も加えて携帯電話が実用化される。その仕組みも現在は第四世代が実用化され、さらに2020年には第五世代の商用化を目指している。次回は各世代の仕組みやそれを支える要素技術について説明したい。

以上 

参考1:https://ja.wikipedia.org/wiki/アレクサンダー・グラハム・ベル
参考2:https://plaza.rakuten.co.jp/makiplanning/diary/200803290000/
参考3:http://musashino-kanko.com/area/otakara/ntt_gijyutsu/ 
参考4:http://www.miyazaki-gijutsu.com/series4/densi0823.html 
参考5:http://www.mathcs.emory.edu/~cheung/Courses/355/Syllabus.linux/90-parallel/
参考6:http://www7b.biglobe.ne.jp/~yumaka/think5.html 
参考7:http://www.infraexpert.com/study/telephony2.html 
参考8:http://d.hatena.ne.jp/haijun/20070917/1189956025