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社会問題:希望の党の公約で感じること

1. プレゼンテーションは上手
小池百合子代表が希望の党の公約の中で、3本柱と12のゼロを説明した。また、希望の党としての公約を示した。ネットを見ると批判的な報道が多いが、プレゼンテーションとしては分かりやすくまとめていると感じた。

2. 3本柱
公約というのは、何かをすることを宣言するべきものだ。企業であれば事業計画を作成し、費用と売り上げから利益を計算し、シミュレーションして最適なものを意思決定する。これは希望の党だけではないが、政党の公約としては、国家の中期計画を示すべきではないか。その意味では、消費税を凍結するのであれば、いつまで凍結するのか。企業の内部留保に課税すると補足説明しているが、それで実現性はあるのだろうか。原発ゼロを2030年までに凍結するとしても、これはエネルギー政策をどうするかを示すべきだ。憲法改正を宣言するのであればその改正の方向性を示すべきではないだろうか。

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    (出典:THE PAGE、参考1)

3. 12のゼロ
個々の施策の実現性や妥当性は別にして、12のゼロを並べるというのは分りやすい。やはりプレゼンテーションは上手だと感じた。国民が共感しやすいことを並べているが、それぞれの重要度と緊急度を明確にするともっとメリハリ感が伝わったのではないだろうか。f:id:hiroshi-kizaki:20171008181140p:plain

4. 希望の党衆院選公約
8分野に公約を整理して示しているのは分りやすい。具体的には、税財政、成長戦略、教育・子育て、働き方改革、憲法、環境・エネルギー戦略、外交・安保戦略、地方の8つだ(資料2)。

1) 税・財政:金融緩和と財政出動に過度に依存せず、民間活力を引き出す「ユリノミクス」を断行する。2019年10月に予定されている10%への消費税引き上げは凍結する。消費増税の代替財源として、約300兆円もの大企業の内部留保への課税を検討する。ベーシックインカム導入で低所得層の可処分所得を増やす。20年度までに基礎的財政収支を黒字化する目標は現実的な目標に訂正する。

2) 成長戦略人工知能ビッグデータ活用の分野で競争力を高めるため、専門人材の育成・獲得をする。民泊などシェアリングエコノミーの推進、自動運転の実現に向けた規制改革を断行する。特区等における事業者選定において、選定過程を国民に全て開示する。

3) 教育・子育て:「待機児童ゼロ」の法的義務付け。配偶者控除を廃止し夫婦合算制度へ移行する。幼児保育・教育の無償化、大学の給付型奨学金を大幅拡充する。

4) 働き方改革:正社員雇用を増やした中小企業の社会保険料負担を免除する「正社員化促進法」を制定する。働き方改革、再就職支援制度の抜本拡充で成長分野へ人材移動を円滑化する。

5) 憲法憲法9条を含む憲法全体の見直しを与野党協議で進める。自衛隊の存在を憲法に位置付けることについて国民の理解が得られるか見極めた上で判断する。国民の知る権利、地方自治の分権を明記する。一院制により、迅速な意思決定を可能とする。

6) 環境・エネルギー戦略:新規原発の建設をやめ、40年廃炉原則を徹底し「原発ゼロ」の30年までの実現を目指す。原発ゼロを憲法に明記することを目指す。再生可能エネルギーの比率を30%まで向上。省エネを徹底しエコ社会を実現する。オリンピック・パラリンピック開催国として国際標準の「受動喫煙ゼロ」規制を実施する。

7) 外交・安保政策:安保法制をめぐる与野党の不毛な対立から脱し、厳しい安全保障環境に党派をこえて対応する。緊張の高まる北朝鮮への対応やミサイル防衛などを含め、現行の安全保障法制は憲法にのっとり適切に運用する。拉致被害者全員の即時帰国に全力で取り組む。日米同盟を深化させる一方、基地負担軽減など地位協定の見直しを求める。

8) 地方道州制導入を目指し国の権限と財源を移す。農業関係の補助金を大胆に廃止し、農家への直接払いに一本化する。

5. 評価したい項目
1) ベーシックインカムへの言及
政党の公約の中でベーシックインカムについて明確に言及したのは評価したい。今後、どのようなベーシックインカムの導入が日本において適切なのかの議論が活性化するのを期待したい。

2) 自動運転への規制緩和への言及
個人的には、地方の移動困難者を救済するには自動運転型の小型バスの導入が有効なのではないかと考えている。運転手が不要なので、大型バスの必要はなく、多くの小型バスをニーズに基づいて最適配置し、最適運転する。そんなスキームが前進することを期待したい。

3) 働くママさんを後押しするような施策の充実
単に待機児童をゼロにすればそれで問題が解決するわけではないが、大学を卒業して、企業で勤務する女性が結婚や出産を機に退職を余儀なくされるような体制を見直すことは急務だろう。

4) 道州制の導入
個人的にはこの議論は好きだ。Wikiによると、2006年に地方制度調査会において、9道州、11道州、13道州の3例を示している(参考3)。安倍内閣もかつて道州制を提案していた。希望の党がこれを前面に取り上げると道州制の次に大統領制の導入も狙っているのではないかと穿ってしまう。

5) 一院制の検討
衆院議員と参院議員の二院制を見直して一院制にするのを目指すという。Wikiで見ると、フィンランドノルウェイデンマークなどの北欧諸国では1970年代に一院制に以降している。下の図は、二院制の国の数と一院制の国の数を調べたものだ。OECD加盟国で44%、世界全体では60%が一院制という。今後人口減少が進む日本では、小さな政府を目指す意味からも検討すべきものと勉強になった。

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    (出典:Yahoo! Japan政策企画、参考4)

6) 電柱ゼロ
景観だけでなく災害対策の意味からも電柱ゼロを目指すという。電柱には、電力会社が設置する電力柱、通信会社が設置する電信柱、共有の共有柱の3種類ある。そしての日本の電柱は2014年10月時点で全国で3,337万本もあるという。海外の主要としてと比べても日本は遅れていると指摘されている(参考5)。

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    (出典:NEWS ZERO、参考5)

以前は深さ1.2mに設置していたが、これだと埋設費用が高いので、0.5mや0.25mに設置する方法や、小型ボックスに設置する方法も検討されている。個人的には新幹線から富士山を見ようとしても電線が景観を台無しにしている。観光対策として、特に富士市を中心とする新幹線の北のエリアの電柱をまずは廃絶してほしい。

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    (出典:無柱化推進会議資料より、参考6)

6. 違和感を感じる項目
1) ユリノミクス
代表のファーストネームを盛り込むのには違和感がある。本来なら日本国をこのような方向に導きたいのかと言う理念があれば、それをコアネームとしてほしい。また、一部ネットでも批判されているように、発音だけだと「尿分析」と同じになると指摘されると小池代表は爆笑されたらしい(参考7)。

2) エネルギー政策
原子力発電所ゼロを目指すのは良いがそれを憲法に明記する意味がわからない。CO2の分離・蓄積を可能とするCCSの活用や東アジア圏での天然ガスのパイプラインの導入など、エネルギー政策を論じる場合には数多くの課題があるのではないだろうか。金融商品と化すような再生エネルギー政策の歪みも是正する必要がある。

3) 教育問題への言及不足
日本の教育問題についての言及が少ない。教育を無償化については言及しているが、教育の問題はそれだけではない。日本の将来を担う子供たちの無限の可能性を引き出すような教育制度についてもっと議論してほしい。

4) 憲法問題
平和を謳う現在の憲法を維持すべきか、現状に合わせて改定すべきかの議論を進めることは賛成だ。ただ、自衛隊への言及に留まるのではなく、日本や日本人の強さや良さを伸ばして、今後、どのような日本はどこを目指すのかという議論を期待したい。

7. まとめ
ネットでは、希望の党の公約について批判的な論調が多いように感じる。しかし、希望の党としての考え方を一般国民がわかりやすいように整理して説明したのは評価したい。また、個々の政策を見ると、選挙対策としてアピールしやすいものを並べているという意見もあるが、個人的には賛同する施策も多いと感じた。今後、希望の党から目を離せない。ただ、戦略家の小池代表なので、選挙の後には自民党と連携する「どんでん返し」のシナリオもあるのではないかと穿ったしまう。

以上

参考1:https://thepage.jp/detail/20171006-00000005-wordleaf 
参考2:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO21990610W7A001C1EA3000/
参考3:https://ja.wikipedia.org/wiki/道州制
参考4:https://publicpolicy.yahoo.co.jp/2013/11/2604.html

参考5:http://www.ntv.co.jp/zero/ichimen/2014/07/post-271.html
参考5:https://ja.wikipedia.org/wiki/電線類地中化

参考6:http://www.mlit.go.jp/road/road/traffic/chicyuka/pdf/PDF09.pdf
参考7:http://news.livedoor.com/article/detail/13721229/