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憲法問題:岡潔博士からベアテゴードンさん

憲法問題は難しい
政治の問題はよくわからない。技術者なので、法律や政治・経済に疎い。そんな言い訳をいつもしている。自衛隊憲法違反だとか、憲法を改正すべきとかそんな議論にはなかなか参加できない。分からないことが多すぎる(涙)。

岡潔博士の指摘
唐突ですが、故岡潔(おか きよし)博士をご存知でしょうか?一般的にはあまり知られていないかもしれないが、世界に誇る日本を代表する大数学者の一人だ。多変数解析関数の分野で世界的な業績を上げた。論文はフランス語で発表していて、フランス通だ。フランス革命は自由、独立、博愛を理念とした。フランス語で言えば、自由=Liberté, 平等=Égalité, 博愛=Fraternitéだ。最後のフラテルニテは友愛というべきという指摘もある。その岡博士がなぜ、日本の憲法には博愛がないのかと指摘されていた。

憲法前文
日本の憲法には、民主主義、自由主義、平等主義、福祉主義、平和主義の5つの原則を定めているという(参考1)。確かに博愛はない。日本国憲法では、第9条がよく議論になるが、特に大切なのは憲法の前文だと思うので引用する。

日本国憲法 前文)日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し、われらとわれらの子孫のために、諸国民との協和による成果と、わが国全土にわたつて自由のもたらす恵沢を確保し、政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する。そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものてあつて、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する。これは人類普遍の原理であり、この憲法は、かかる原理に基くものである。われらは、これに反する一切の憲法、法令及び詔勅を排除する。日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであつて、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。われらは、いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのであつて、政治道徳の法則は、普遍的なものであり、この法則に従ふことは、自国の主権を維持し、他国と対等関係に立たうとする各国の責務であると信ずる。日本国民は、国家の名誉にかけ、全力をあげてこの崇高な理想と目的を達成することを誓ふ。

5つの原則のうちに前文に書かれているのは、自由が1回、平和が4回だった。平和憲法と呼ばれる所以だろう。

櫻井よしこさんの主張
2015年5月3日にジャーナリストの櫻井よしこ氏は公開憲法フォーラムで憲法前文のいびつさを訴えた(参考2)。国民の命、幸福、安寧を守っていくことが為政者の一番大きな責任だが、前文には「私たちの命を「国際社会に預けなさい」と書いてある」という。この前文も分かり難いが、どこをどう読めば櫻井さんの指摘するような解釈ができるのだろう。
ベアテ・シロタ・ゴードン(Beate Sirota Gordon)
またまた、唐突に感じるかもしれないが、ベアテ・シロタ・ゴードンさんをご存知でしょうか?戦後GHQ憲法草案制定会議のメンバーとして特に人権条項作成に関与した。実は、この女性の父はユダヤウクライナ人で世界的に有名なピアニストであり、ヨーロッパで反ユダヤ主義が台頭したこともあり、1929年の夏に来日し、終戦まで日本に滞在した。ベアテさんは5歳で来日し、16歳で米国に留学した。第二次世界大戦が勃発し、日本からの仕送りが途絶えたために始めたアルバイト先が米FCCとなり、日系二世でも聞き取れない言葉を理解するということで頭角を現し、最終的にはダグラス・マッカーサー率いるGHQにて調査専門官となった(参考3)。憲法の前文を考えたのはベアテさんではないが、人のつながりの不思議さを感じる。

阿波研造
今日は話がどんどん飛ぶが、阿波研造という弓術家をご存知でしょうか?そもそも弓術家という言葉自体を耳にすることが少ないかもしれない。この阿波研造は弓聖と称えられるが、術としての弓を否定し、道としての弓を探求した。この阿波研造が世界に知れるようになったのは、ドイツ人のオイゲン・ヘリゲルが弟子入りし、弓道にのめり込み最終的には五段まで上達した。このヘリゲルは、阿波研造からの教えをまとめた「弓と禅」が世界的に知られたためである。そして、この弓と禅は、アップルの創業者スティーブジョブズが愛読していたことから日本でも知られるようになった。

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弓と禅でのエピソード
せっかくなのでジョブズが読んだ英語版を注文したが、まだ手元にはない。日本語版はKindleでも読めるということで早速読んでみた。かつて菊と刀を読んだ時と同じように、日本の武士道を外人から教わった感じだ。日本人の原点をもっと先人から学びたいと思った。
・無心で弓を引き自ずと弓が離れる時を待つ。
・悪い射で腹を立てない。良い射で喜ばない。
・快と不快の間を右往左往しない。
弓道の目標は的中ではない

まとめ
憲法論議をする場合にも、日本人は何を目指すのか。日本人の原点は何か。日本人として世界にどのように貢献できるのか。日本人として日本国にどのように貢献するのか。日本国は日本や世界の人の幸せを守るために何をすべきなのか。そんな哲学的な答えのでない難問を真剣に考えて、議論して、合意する。そんなステップを避けるべきではない。今日は支離滅裂というか、いろいろな偉大な人物に焦点を当てて、憲法問題について少しマニアックに考えてみた。やはり難しい。。

 

参考1:http://www.abenolaw.jp/izumi/kenpo/112/
参考2:http://www.sankei.com/affairs/news/150503/afr1505030017-n2.html
参考3:https://ja.wikipedia.org/wiki/ベアテ・シロタ・ゴードン