LuckyOceanのブログ

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コンクリートの昔と今と将来

日本技術士会のカフェテクノへの参加
9月24日(日)に開催された日本技術士会中部本部が後援する環境大学のカフェテクノに参加した。講師は日本技術士会中部本部倫理委員会の前委員長の伊藤博技術士だ。土木も建設も門外漢の自分には理解できないが、同じコンクリートでも土木の人と建築の人では用語や着眼点が違うらしい。新鮮だったので、その時に教えてもらったことをベースにネットで調べた内容を報告する。

コンクリートの最古の建造物
世界最古の建造物というとやはりピラミッドでしょうか。下の写真はエジプトのギザにある三大ピラミッドだ(参考1)。そして、エジプトのピラミッドは現代とは異なるコンクリート(ローマン・コンクリートとか古代コンクリートと呼ばれているが、以下、古代ローマ式コンクリートと言う)で固められている。驚くべきはその耐久性で数千年の耐久がある。現在のコンクリートは50年程度と言われており、古代ローマ式コンクリート技術に負けている。

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古代ローマ式コンクリートは組構造
古代ローマ式コンクリートの製造方式はまだ完全には解明されていないという。しかし、ざっくりと言えば、次の図のようにまず外装材を作り、そこにモルタルを流し込み、その上に割石を敷いて、さらに棒でその割石を突いて押し込む。更にモルタルを流し込んで、同じように割石を敷き詰める。そんな風にして大型の建造物を作ったという(参考2)。

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古代ローマ式コンクリートの材料は火山灰
古代ローマ式コンクリートは 火山灰と石灰と水を混ぜ合わせたものだ。火山灰は水と混ぜると固まる特性があるが、古代ローマ人はそれを活用した(参考3)。また、古代ローマ式コンクリートは、炭酸ガスを吸収して硬度を増すという。現代のコンクリートは生成時に大量のCO2を排出するが、古代ローマ式コンクリートは逆に吸収する。この点でも古代ローマ式コンクリートはすごい。

ポルトランドコンクリートとジオポリマーコンクリート
現代のコンクリートは、ポルトランドセメントと呼ばれるもので、石灰石(約80%)と粘度が主原料だ。下の図の左のように、水と化学反応することで硬度の高い化合物(水和物)となる(参考4)。一方、古代ローマ式コンクリートは下の図の右で、ジオポリマーコンクリートと呼び、石灰石とアルミナシリカ溶液との反応でポリマー化することで硬化する。古代ローマ式コンクリートの硬化の原理は、現代のコンクリートの硬化の原理と全く異なる。

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二酸化炭素の排出量の違い
ポルトランドコンクリートだと1kgの生成で0.84kgのCO2が排出される。これに対してジオポリマーコンクリートではCO2の排出は80%程低減される。ジオポリマーコンクリートには、環境にも優しいだけでなく、硬化が早く、耐久性が高いという特徴がある。

ジオポリマーコンクリートの課題
ジオポリマーセメンの課題は、ジオポリマーに使用するアルミナシリカ粉末とアルカリ溶液が多様で調合が難しい点だ(参考5)。謎の素材が不明のため、ローマ式のコンクリートを未だに再現できないという。今後、調合の知見を結集する必要がある。

環境に優しいセメント
火力発電所から排出されるガスや、廃材を活用してセメントを製造するような仕組みも検討されている。空気も水もクリーンなものが排出されるとすれば素晴らしい(参考6)。

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まとめ
ローマやギリシャの建造物を支えていた古代ローマ式コンクリートは現在のコンクリートよりも優れているというのに驚いた。現在のコンクリートが発明されたのは1756年、特許出願が1824年、実用化が1840年西ローマ帝国の滅亡(476年)とともに、古代ローマ式コンクリート技術も製法も喪失されてしまった。1300年の時を経て復活したが、完全な再現ではない。古代ローマ式コンクリートを超えるようなジオポリマー方式のコンクリートを極めれば自然環境にも優しく、かつ数千年の耐久力のある建造物が可能となるのだろうか。今後、ジオポリマー方式の開発競争から目を離せない。

以上

参考1:http://fusitan.net/0008/ 
参考2:http://hypertree.blog.so-net.ne.jp/2014-04-18 
参考3:http://blog.livedoor.jp/shyougaiitisekkeisi2581/archives/51285713.html 
参考4:https://en.wikipedia.org/wiki/Geopolymer_cement
参考5:http://www.jci-net.or.jp/~tc155a/shushi.html 
参考6:https://dirt.asla.org/2010/03/24/turning-co2-into-cement/