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ベーシックインカム(UBI)を提供する本質的な意義

UBIの本質とは?
UBIは、弱者保護や格差是正少子化対策といったことを目的とした施策のように捉えられることがある。それらは一面正しい。しかし、それらは本質だろうか?

弱者保護か?
失業者が増えると犯罪が増える。収入がなくなるので消費が減る。それを防ぐ効果はあると思うけど、それは本質ではない。低所得層を救済するのであれば、現在の福祉制度を強化するべきだろう。

格差是正か?
低所得者層に資金を再配分するのがUBIの本質だろうか?同じ金額でも、高所得層よりも低所得層の方が、その効果は大きい。例えば、年間100万円で生活している人にとって例えば年100万円のUBIを貰えればそれは所得倍増になるが、年収1千万円の人にとっては1割の増加でしかない。しかし、UBIを導入しても収入が単純増加(平行移動)するだけで、格差是正にはならないし、これが本質でもない。

少子化対策か?
ホリエモンこと堀江貴文さんはツイッター等で、UBIは少子化対策になるとつぶやいている。学費免除よりもUBIの方が家計の救済効果は大きいし、極端な話、失業した夫婦が子供の一人産めばUBIの受け取りは1.5倍になる。二人産めば倍になる。将来の生活への不安も払拭されれば子供を持ちたい夫婦にとっては朗報だろう。しかし、高額所得層にとっては、UBIを受け取るからもう一人産もうということにはならないだろう。これも本質ではない。

 

では、何が本質なんだろうか?

 

ロボット(AIを含む)と人間の関係
私は、人間(国民)とロボット(AIを含む)の関係をどうするのか、どうあるべきなのかという議論がUBIの本質だと思う。つまり、ロボットは人間と競合する存在なのか?それとも、人間の僕(しもべ)のような存在なのか?もしくは、ロボットから見ると人間は愚かな家畜のような存在になっていくのか。

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希望的観測を含めて個人的な意見としては、上の図のように当面は労働者の労働がロボットに置き換わって失業するという競合状態が発生するが、ロボットの利用が増大し、定着すると、ロボットが多くの労働の担い手となって社会を支える存在になるのではないか。さらに、人間は人間にしかできないことを追求し、ロボットと切磋琢磨しながらさらに幸せで高度な社会を作っていく。そのようなユートピアを目指すという楽観的なシナリオを描きたい。その逆は、ロボットに職業を奪われ、最低限の生きていくための収入で生きていくという図式だ。

整理していて感じることは、ロボットの能力は指数関数的に高まってきたし、これからも高まっていくだろう。しかし、人間が自らの能力を高めるかどうかは、人間次第だ。従って、UBIが実現した時に、ロボットの機能を活用し、さらに上を目指す、例えて言えば将棋の藤井プロのような存在を目指すのか、それとも面倒な仕事はロボットがやってくれるのでラッキーと怠惰な存在となるのかは、個々人の価値観次第だ。上を目指すのも良いし、楽な生活を目指すのも悪くはないかもしれない。どちらが幸せと感じるかはそれぞれだからである。

しかし、いずれにせよ、そのような図式の社会にシフトしていくには、ロボットが頑張って生産性を高めて、必要な食料、必要なインフラ、必要な情報を生成し、その成果を基礎として人類が生きていくということになる。その場合には、UBIのような仕組みは必須である。

ロボットによる成果とUBI
UBIが可能かどうかとか、UBIとして支給すべき金額というのは、AI技術を含めて、ロボットがどれだけ生産性を高めているのか、どれだけ貢献しているのかに依存する。ロボットの活用が未成熟な社会では、UBIを支給する原資がない。

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これをチャートにすると上の図のようになる。現状は左下のマトリックスだが、ロボットの生産性が高まるのに何もしないと失業者が不要に増大してしまう。そのために、ロボットが高めた生産性に応じて、適正なレベルのUBIを支給する。このように右上の間トリックを目指すのが望ましい社会だろう。

避けなければならないのは、右下と左上だ。右下の状態が長く続くと不況が深刻化して、UBIの原資がないという議論からUBIも支給できず、最悪のスパイラルに陥るリスクがある。一方、左上はロボットによる成果以上に、もしくはそれに先行して、UBIを開始するために、原資を確保できずに行き詰まってしまう。一度行き詰まると再度UBIを展開することが非常に困難となる。

したがって、UBIの展開はロボットの成果に合わせて徐々に拡大することが肝要だ。ロボットの進化は指数関数的に進展するため、UBIの展開はスモールスタートが効果的ではないだろうか。金額の問題ではなく、UBIを展開する仕組み作りがより重要だ。

UBIを提供する仕組みとそこから生じるビッグデータの活用
国がどのようにしてUBIを国民に支給するのか。支給されたUBIを国民がどのように利用するのか。その利用状況を蓄積し、ビッグデータとして活用することは可能か。そのような仕組みを十分に議論するべきだ。

現在は、月7万円程度を例にして説明されることが多いが、スタート時は、その10分の1でもいいのではないか。そのレベルであれば長期的に展開すると政府もコミットできるのではないだろうか。そして、ロボットの普及に伴いロボットが社会に貢献するようになったら、その原資をUBIとして還元し、ロボットが生産したものやサービスを人間が消費する。そのような図式でバランスを取っていく。

景気対策の調整弁としてUBI
UBIの支給金額が適正金額よりも多いとインフレになると言われている。意志を持ってインフレにするのは別にして、適正以上のUBIを支給すると必要以上に需要が喚起して、供給を上回るので、インフレになる。これは理解しやすいだろう。逆に、UBIが適正以下だと、本当は需要があるが、それを我慢するためモノやサービスが購入されずに、値下げ競争(=デフレ)となる。

デフレ脱却の必要性を政治家がよく発言するが、本当にデフレ脱却したいのであれば、消費を喚起するためにUBIを導入すれば有効だろう。金利を下げても、マネタリーベースを増やしても需要は喚起されない。しかし、消費者が自由に使えるUBIを制度化すれば需要は喚起されるだろう。ただし、UBIの本質的な意義は景気の調整弁ではない。

UBIの適正な運用が重要
適正以上に支給すれば当然ながら原資が不足して破綻するリスクがあるので注意が必要だ。同時に、適正以下の水準だと、十分な経済効果を得られず、失業問題やデフレ問題、自殺問題などが多発する不幸な世界に突入するリスクがある。適切なレベルでのUBIの支給が非常に大切である。また、景気の調整は付随的な機能だ。ロボットの活躍による効果を人間にフィードバックさせることで、ロボットと人間のWin-Win関係を維持することがUBIの本質的な役割だと考える。

以上