LuckyOceanのブログ

新米技術士の成長ブログ

教育ICTについて考える。

学校とタブレットの関係の現状

2年ほど前から全国の小中高を行脚してICTのモラル教室の講演を行っている。学校を訪問して子供達にお話をしたり、逆に子供達に現状を教えてもらったりするのは本当に楽しい。

かつては荒れていたような不良校が更生して進学校になっていたり、全国生徒27名という離島の中学校や、全校生徒1000人規模の中学校もある。もっとも講演の多いのは小学校であり、特に5−6年生が多い。でも、時には1−2年生対象の講演だったり、1−6年対象の講演だったりしていつもチャンレンジングだ。

学校を訪問すると、校内Wi-Fiの工事をしていたり、タブレットが全校生徒に配布しましたという学校もあるが、まだまだ少ない。ほとんどの学校は、全校生徒の1割程度とか、一クラス分は配布されたが、先生がどのようにそれを使いこなすのか思案中という感じだ。

ここ1−2年は若い教員の登用が目立っていて、学校を卒業したばかりの若い先生はタブレットを普通に使いこなしているが、スマホもあまり使っていないようなベテランの先生がタブレットに興味を示すことは稀だ。

校長先生から見ても、タブレットを使った教材にドラスティックにシフトするわけにもいかず、ベテランの先生の意見も聞きながらソフトランディングを試行している感じであり、積極的にICTを活用しようとしている校長先生は稀だ。

しかし、肝心の生徒は自分のスマホや自宅のタブレットを自由自在に活用していて、校内でのタブレット利用には全く拒否感がない。

 

生徒と先生の知識レベルの逆転
進んでいる先生もいるし、遅れている生徒もいる。でも、平均すると、スマホタブレットの利用技術は生徒の方が進んでいる。そして知識レベルで遅れている先生が、知識レベルで進んでいる生徒に教えないといけない。この矛盾が教育現場にICTを持ち込み、活用するための最大のジレンマであり、ハードルではないだろうか。生徒は学習にタブレットスマホを使うことに抵抗はないが、先生にそれを教える自信がない。もっと言えば、知識がない。活用しようという熱意がないと最悪だ。

 

先生に必要なスキルは何だろう
でも、よく考えてみてほしい。例えば小学校の先生が教えるべきはタブレットスマホSNSのことではないはずだ。算数であり、国語であり、社会であり、理科である。その知識は当然ながら先生はあるし、経験も豊かだ。タブレットは単なる道具であり、それ以上でもそれ以下でもない。何を恐れる必要があるのだろうか。確かに、タブレットを活用した教育教材を作成するのであれば、タブレットの操作に習熟しているべきだが、誰かが作ったタブレット教材を活用するのであれば、それほど高度なスキルは必要ないし、そもそもそれもできないようなら教員を続けるべきではない。若い教員に譲るべきかもしれない。

 

寺子屋と現在の学校
かつての寺子屋では、数十人の生徒(当時の筆子)はそれぞれの課題に対処しながら、必要に応じて先生(当時の師匠)が生徒を指導したという。Wikiを見ると江戸時代末期には全国に16,560の寺子屋があったという。文科省が発表する平成28年度学校基本調査(参考1)によると小中高の学校数と生徒数は以下のとおりだ。
     学校数    生徒数
小学校  20,313   6,483,515
中学校  10,404   3,406,029
高校     4,925   3,309,342
  参考1 http://www.mext.go.jp/component/b_menu/other/__icsFiles/afieldfile/2016/12/22/1375035_1.pdf

 

先生の仕事は教える事+教材を作る事
先生がすべき事は教える事だ。しかし、何十年も前から同じ内容を板書して、同じところでジョークを言うような授業では、これからは通用しないだろう。生徒に理解してほしい事を生徒が理解できるように説明し、生徒が理解したかどうかをチェックしながら、必要に応じて補足説明をする。先を行く子供にはさらなる応用問題にチャレンジさせたり、理解できていない子供にわかるように説明させたりする。そんな風にボトムアップとトップアップを同時並行的に実施することが今後は求められる。

 

ICTの特徴は生徒中心の教育ではないか
寺子屋の時代は一人一人のレベルに合わせた教育をしていたが、戦後の教育改革では、より均質的な教育とボトムアップが重視された。それはもちろん間違いではないが、これからの情報通信革命が進む日本を支える子供達への教育が旧態依然で良いわけがない。ボトムアップと同時にトップアップを行うには、タブレット教材等のICT活用は絶好のツールになるのではないか。逆に言えば、このトップアップとボトムアップを同時に行うと言う目標がないと、旧態依然とした教材を単にデジタル化したものに留まってしまうのではないか。

 

学校教育と塾の関係
英国でトップアップというと、プリペイドカードの残高をチャージするという意味だ。辞書で見るとコップの上まで水を満たすようなイメージもある。イングランドでトップアップ教育というと裁量制の授業制度の意味だ(参考2)。現在の学校教育はボトムアップだが、塾は有名校への合格率を上げるためトップアップだ。優秀な生徒は塾に通い、塾では学校より進んだ授業を生徒に寄り添って優しく厳しく指導するので、学校の授業を退屈だと感じると言う。それっておかしく無い?
   参考2 http://www.jsps.org/information/documents/08/080813_2.pdf

 

教育ICTの国内市場
2013年9月20日の資料と少し古いが市場調査会社のシードプランニングの調査(参考3)によると、2020年には教育用ICT機器の国内市場は1160億円規模になるという。教育ICTにはセキュリティの問題からAndroidは除外されていると聞く。個人的にはWindows版のセキュリティが高いとはとても思えないが、候補はWindows版かiOS版になる。例えば、32GBのWi-FiiPadなら4万円を切る。仮に調達価格が4万円とすると290万台相当となる。しかし、この予算にはタブレット以外の費用も含むので、仮に200万台相当とすると、小中学生は5年間も同じ機種を使い続けないといけないのだろうか。
  参考3 https://resemom.jp/article/2013/09/24/15309.html

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教育用タブレットのBYOD解禁
公立の学校では事例が少ないようだが、私立の学校では入学時に生徒がiPadの購入することを条件とする事例が出ている(参考4)。これは単に学校側のコスト削減を目的としたものではなく、生徒にとってもメリットがあるWin-Winの方法だと言える。

 学校:iPad導入のコストが不要。資産管理が不要。
 生徒:自分のiPadを支える。
   :iPadに保存した内容は自分の責任の配下で保存、活用できる。
   :性能が古くなったり、容量が不足したら、自分の判断で機種変更できる。
  参考4 https://enterprisezine.jp/iti/detail/6712 

 

BYOD解禁のための課題
小中学校で教育タブレットのBYOD解禁を解禁するには何が問題なのだろう。すぐに思いつくのは次の3点だろうか。

1)生徒の費用負担
2)セキュリティの問題
3)タブレットの目的外利用

課題1:生徒の費用負担
タブレットを学校側で用意せずに生徒側が用意する方法では、経済的にタブレットを購入できない生徒をどのように救済するのかという問題が生じる。先の私立校のように入学の条件とすることは公立校ではできないし、やるべきではない。公立校では、タブレットの適用機種を宣言し、その機種を生徒で用意することを認めるべきだ。そして、生徒自身で用意できない台数分を学校側が用意すれば良い。1−2年で最新の機種に変更する生徒もいるかもしれないが、そのような機種変更で古くなったタブレットを学校に寄付してもらうことも許容(強要ではない)してもいいのではないか。そのような対応が取れるのであれば、学校側の費用負担はずっと減るし、その分をWi-Fi整備やセキュリティ対策や、コンテンツ作成などのインフラに回せるのではないか。

 

課題2:セキュリティの問題
これは最も注力士なければいけない課題の一つだ。BYODで利用するタブレットには共通のセキュリティアプリを搭載して、BYODの機能制限を行う必要があるだろう。しかし、これは学校側がタブレットを直接管理する場合にも必要なことである。実物の棚卸管理が不要な分だけ、BYOD活用の方が学校の負担は少ないといえるのではないだろうか。大学などの高等教育機関でBYODを許容している事例は多数あるようだ(参考5)。

  参考5 https://www.ashisuto.co.jp/product/theme/virtualization/ericom_whitepaper_byod.pdf

 

課題3:タブレットの目的外利用
学校の先生、特に指導担当から見ると、学校内でスマホタブレットの利用を解禁することには抵抗があるかもしれない。しかし、文科省も2020年にタブレットの利用を目標としている。スマートデバイスも規制の時代から活用の時代に変革させる必要があるだろう。ただし、なんでも許容すれば良いというわけでもない。BYODを先行して導入した袖ヶ浦高校の事例を見る(参考6)と、EvernoteDropbox、Ednityなどを使っている。
  参考6 https://www.pc-webzine.com/detail.html?id=103

 

学校向けSNS(ednity:エドニティ)とは
Ednityとは、iphoneiPadで使えるコミュニケーションアプリであり、次のような機能を具備しているという。iOSのみという制限はあるが、使い勝手は良さそうだ。
【こんなシーンご利用できます】
・HRや授業での日常の連絡
・授業で必要なファイルやURLの共有
・学習での疑問点の質問
・教職員の情報共有
・文化祭の準備や課題研究などのチームプロジェクト
・部活動などの課外活動
【ednityの特徴】
・先生、生徒、役割ごとに違う学校や教育機関に適した機能権限
・グループ作成権限は先生のみ
・グループ参加には先生しか見れないグループコードが必要
・シンプルなインターフェース

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奈良女子大学附属中等教育学校でのEdnity活用
Ednityの評判をネットで調べていたら、奈良女子大学附属中等学校での活用事例が報告されていた(参考7)。ここでは、教育SNSを活用することで正解到達型ではなく、目標創出型のアクティブラーニング(A.L.)を目指すという。特に、SNS利用では教員からの課題提示や個別問いかけが有効だったという。SNSを教育の場で実践することで、子供達にただしいSNSを指導するという副次的効果も期待できる。
  参考7 http://www.kknews.co.jp/maruti/news/2016/0905_2f.html

 

米国の教育SNS(edmodo)も日本語化
先のEdnityは日本初の日本のSNSであるが、海外ではどうだろうか?教育分野のテクノロジーやWebサービスを最近はEdTech(エドテック)と呼ぶ。教育SNSが注目されるきっかけになったのは米国が2008年にサービスを開始したEdmodo(エドモド)だ。Ednityを運営するEdnityが設立したのは2013年だ。同じ2013年に先生同士のコミュニケーションに特化した教育SNS(SENSEI NOTE)が始まっている(参考8)。

  参考8 http://blog.goo.ne.jp/tgalmoh/e/bf7f5dbeb7362db95a671fb867c13b25

 

注目されるChromebook
東京都港区にある広尾学園高校は、iPadのBYOD活用をいち早く進めたが、2014年に医心・サイエンスコスに入学する生徒から標準端末をiPadからChromebook (C720)に変更している(参考9)。同校の木村教諭によると、理由は次の3点だという。

1) iPadでも問題はないがより長い文章入力が必要だった。
2) ChromebookiPadと性能面で遜色がなくより安価だ。買い替え負担の低減。
3) Chromebookは常時接続が前提だが、校内Wi-Fiが整備が進んでいて問題なかった

一方、課題はChromebookでサポートしていないアプリがあることや、自宅でWi-Fi環境がない生徒がいることへのケアだという。
  参考9 http://techtarget.itmedia.co.jp/tt/news/1503/31/news05.html 

 

立命館宇治ではサイボウズLiveを活用
教育ICTとしては、EdnityやEdmodoが一般的だが、サイボウズLiveを活用している事例があった。立命館宇治中学・高校では、2011年にiPadを学校共有タブレットとして試験的に導入した(参考10)。本格的に一人一台のタブレット導入した2014年度ではWindows系を選んでいる。その時に学習ポータルサイトの候補はサイボウズLiveとEdmodoとEdnityだったが、最終的に選んだのがサイボウズLiveだった。Edmodoは同校内でも利用実績はあったが、当時は日本語環境が整っていなかった。EdnityはUIが分かり易かったが当時はスマホ環境がなかった。一方、教職員はサイボウズがルーンの利用経験があったためという。サイボウズLiveのチャット機能はアクティブラーニング(A.L.)との相性も良く、グループ内のディスカッションに頻繁に活用されているという。ただし、サイボウズLiveは設計思想が古いので1ファイルの容量が25MBに制限されているのがネックだという。
  参考10 http://techtarget.itmedia.co.jp/tt/news/1605/30/news02.html

 

総務省が定める教育ICTガイドブック
総務省では、教育ICTの事例集と導入手順を教育ICTガイドブックとして同省のホームページに公開している(参考11)。これによると、2016年6月2日に閣議決定された「日本再興戦略2016」に基づき、総務省では「2020年度にはクラウド上の教材等を利用可能な学校が100%になること」を目指すという。また、このガイドブックでは情報端末の要件として、次のような記載例を示していた。

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  参考11 http://www.soumu.go.jp/main_content/000492552.pdf

 

教育目的の動画が伸びている

YouTubeのディレクターがYouTubeキッズを都内で説明した時に、世界中で盛り上がっているのは教育コンテンツの動画配信だという(参考12)。例えば、米国では物理ガールというチャネルで重力といった科学的テーマを解説して人気だという。そして、このような教育コンテンンツに関わるクリエイターはエデュチューバーと呼ばれているという。また、YouTubeキッズでは、タイマーという仕組みを設けて子供に動画をどれだけ見せるかの判断を親に委ねている。
 参考12 https://withnews.jp/article/f0170706001qq000000000000000W01a10101qq000015501A

 

YouTube Kids

2017年5月31日に子供向けのYouTube視聴アプリ(YouTube Kids)がリリースされた。米国では2015年2月にリリースされたので2年ほど遅れての展開だ。YouTubeKidsには、年齢に適したブロック機能があり、未就学児、学齢児童向け、すべてのお子様向けに選択できるのが特徴だ。

YouTubeKidsで見れるYouTuberと見れないYouTuberは次の通りらしい(参考13)。

また、動画は、アニメ・ドラマ、おんがく、まなぶ、はっけんの4つのジャンルに分けているようだ(参考14)。

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  参考13 http://takaakiokamoto.com/?p=3447
  参考14 http://ksunmoon.com/school-work/youtube/ 

 

まとめ
教育の現場を日々訪問していると日本でのICT教育の遅れを感じることが多い。でも、先行事例は多数出ている。パイオニアの頑張りをトリガーにして、日本でも広く教育ICTが活用されるようになってほしいと思う。そのためにネックとなっているものはなんだろう。それを技術士である自分はどのように解決できるのだろう。そんなことを考えながらブログを書いてみました。今日はこれぐらいにします。最後まで読んでいただき本当にありがとうございました。

                                 以上