LuckyOceanのブログ

新米技術士の成長ブログ

(その6:まとめ)ベーシックインカムを政府発行の仮想通貨として国民に支給したらどうなるのだろう?

はじめに
そもそもこのシリーズを書こうとしたのは日本人の幸福度が、GNPとの相関関係から外れて低いことだ。日本では経済成長重視で頑張ってきたが、それが日本人の幸福感に繋がっていない。なぜなのだろう。UNICEFの調査では、世界の国に比較して、日本人の子供は頭が良い。お行儀も良い。健康な環境で生活している。しかし、寂しいと感じる子供が多く、向上心がない。なぜそんな風になってしまったのだろう。日本人は誠実だし、真面目だし、約束を守り、信頼に足る民族だ。しかし、日本人自身は、自信を失っているように感じる。特に、リーマンショック以降の低成長時代に生まれた子供たちは、バブル時代を経験した人間と異なり、大人しい気がする。このシリーズでベーシックインカムを実現した場合の効果や留意事項を深掘りしてみたが、これで解決するとは思えない。経済的な対処は必要条件だと思うけど、十分条件ではない。やはりもっと精神的な心の解決策が必要な気がする。そんなことを少し整理して考えてみたい。
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1. 日本人の幸福度は上がるのか
(1) 子供たちの心

3年間ほど日本中の学校を訪問して講演をしてきた。その中で感じることは田舎にはまだまだ日本人の良さが残っている。特に三世代の家族体制で、おうちにはおじいちゃんやおばあちゃんがいて、子供の面倒を見てくれる体制のある地域では、子供の表情が明るい。挨拶もしっかりできる。校長先生と保護者の信頼関係もしっかりある。一方、都心の小学校に行くと、先生が疲弊している。例えば、青山とか目黒といった都内でも一等地の公立学校に通うような家族は中級以上だろう。しかし、夫婦ともに仕事を持っていて、子供はお家に帰っても誰もいない。おこずかいはいっぱい貰うが、愛情が不足しているのだろうか。集合時間になっても現れない。挨拶もまともに出来ない。都心の学校が全て悪いわけではない。台東区の小学校では先生と生徒の信頼関係がバッチリできていた。同じ都内でも、家族のしつけや、家族と学校との信頼関係ができているケースとそうでないケースがある。UNICEFの調査はこのシリーズでもリファーしたが、ショッキングだ。しかし、問題はそういうことを日本のマスコミやあまり報道しない点だ。なぜなのだろう。

(2) ワーキングプア
一時期保育所に入れないことが国会でも盛んに議論されていた。亭主の収入だけでは暮らしていけないので、奥様も働く。しかし、子供の面倒を見てくれる人がいない。仕方なく、保育所を探すが入れない。面倒見てくれない。どうすれば良いのか。ワーキングプアともいう。働く女性は、働かない女性よりも貧困だという。日本の社会はシングルマザーに冷たいと思う。下の図は厚労省国民生活基礎調査をもとに金谷さんがブログで掲載したものだが、母子家庭の所得は全世帯平均の4割弱の212万円。高齢者世帯と比べて7割。母子家庭の一人当たりの金額は81万円だ。ベーシックインカムが特に求められているのは、こういった人たちではないかと思う。年収600万円の人にとっての100万円と、年収200万円の人にとっての100万円はもう価値が全然違うだろう。
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 出典:シングルマザーに福祉ではなく労働権を「シングルマザー専用」の職業紹介事業の記事 | 金谷千慧子ブログ-Koechiワールド

(3) 少子化の原因
前述の金谷さんのブログには次のグラフも掲載されていた。子供がいる現役世帯で大人が一人の世帯の貧困率で世界主要国を比較すると、もっとも貧困率が小さいのはデンマークの6.8%だ。ついで、スウェーデンノルウェイフィンランドと北欧諸国が続く。そして、残念ながらもっとも高いのが日本で58.7%だ。デンマークのほぼ10倍だ。こんな環境のもとで子供を産んで育てろと本気でいっているのだろうか。
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 出典:恐ろしい勢いで進む女性の貧困化 | 金谷千慧子ブログ-Koechiワールド

(4) 最貧困女子
日本はかつては1億総中流という言葉が流行するほど、社会の階層がないと言われてきた。しかし、ちょっとショッキングだけど、下の図は日本でも階層社会の実態を示したものだという。それぞれの層の比率が知りたいところだが、高所得層がいて、プチセレブ層がいて、中流層がいて、その下に低所得層がいる。このルポライター鈴木大介氏によると、その低所得層は、マインドヤンキーと呼ばれる比較的自由をエンジョイしている層と、貧困層と最貧困層に分類できるという。最貧困層にいる人の多くは、親からの虐待などの生い立ちを抱え、負のスパイラルから抜け出せないで身も心もボロボロになっている。そして、問題はそういう層の人は行政の支援を拒否する側面があることだ。彼女たち自身が児童養護施設で育っていて、自分の子供を奪われるという心理と、児童養護施設で子供に寂しい思いをさせたくないという気持ちを持っているという。
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 出典:社会が知らない「最貧困女子」の実態

(5) 貧困率と子供の心
ある中学校の校長先生と話をしていた時に、この学校の生徒はまだ恵まれている。以前いた、ある地域の学校はいわゆるシングルマザーが多い地域で、貧困層が多く、学校も荒れていた。不思議なことに、そういう貧困層の家族は、子供に携帯やスマホを使わせるのが早い。しかも、ルールなど決めないので、色々な事件が起きる。保護者を呼んでモラル教室をしても、そこに参加するような保護者には全く問題はない。問題は、そのようなモラル教室に参加しない、もしくは参加できないような保護者だ。

(6) 相対的貧困状態の子供は320万人
日本においては6人に一人の子供は平均所得の半分以下の相対的貧困の中で暮らしているという。特にひとり親世代の貧困率は先にも書いたようにワーストワンだ。下のグラフによると、児童養護施設に在籍している児童は3万人ほど。その約10倍の29万人は生活保護世帯児童だ。しかし、それは見えている部分であって、その水面下には、約 300万人の貧困世帯児童がいるという。このような世帯の子どもたちが、将来への希望を持って、必要な教育を受けたり、愛情を感じる社会にすることこそが日本に求められていることではないかと感じる。負の連鎖を断ち切ることができるのは我々大人であり、日本人の責務ではないだろうか。
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 出典:見えない貧困 | 認定NPO法人エデュケーションエーキューブ - EducationA³

2. 日本人の品性
(1) 品位とはなんだろう。

日本語のWikiで品性を調べると、品位(人品)とでる。品位とは「気高く尊敬を買う人徳と、品格に満ち満ちている様をいう。」とある。しかし、品位のWikiには英語版がない。品位は英語でなんというのだろう。辞書で調べるとDigunityが近いようだ。DigunityをWikiで引いて、その日本語版を見ると、「個人の尊厳」とある。個人の尊厳とは、すべての個人が互いを人間として尊重する法原理をいう。しかし、個人の尊厳は人権であって、品位ではない。

(2) 日本人の品位
少し古いが、2006年にGigazineが調査したところ、日本人が失いつつある品格・道徳観(複数回答可、サンプル数2114)は次のようになった。上位5つは次の通りだ。
・礼儀正しさ:54%
・謙虚さ:47%
・思いやりの気持ち:45%
・恥ずかしいことをしないという考え:45%
・忍耐:40%
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 出典:「日本人の品格・道徳観」に関する調査結果 - GIGAZINE

(3) 心の煩悩
品位や道徳で問題にするのは心だ。法で問題にするのは行動だ。CIAがスパイを採用するときには対象者の欲望を刺激するという。具体的には、金と性と名誉だ。高額な報酬を示す。都心に事務所を開き、ビジネスマンになって美人秘書を雇う。好きなタイプの女性を愛人にする。名誉を与える。名誉職に就かせる。大学の教授にする。そんなオファーを受けられる人はごく一部だが、断ることができるだろうか(笑)。仏教では人間は108の煩悩を持つという。そして、貪(とん)・瞋(じん)・癡(ち)・慢(まん)・疑(ぎ)・悪見(あっけん)の6つを六大煩悩という。日本人が持つ品位とはこのような煩悩に対する先人の知恵ではないかという気がする。
・貪:欲望そのもの
・瞋:怒り
・癡:愚かさ
・慢:自分より優れた人を認めない。
・疑:疑う心
・悪見:間違った考え

(4) 法に触れなければ何をしても良いのか
日本は法治国家だ。放置国家ではない(笑)。日産自動車のゴーン元会長は法に触れたことはしていないと主張している。しかし、日本的な心で経営をしていたのか。稲盛和夫さんの言葉を借りれば「利他の心」を持っていたかといえばノーだろう。煩悩に塗れていたというと言い過ぎだろうか。日本人の倫理観に反する行動だ。そもそも倫理観や道徳観は心の持ち方を規定している。そして、法律は行動を規定している。人のものを欲しいと思っても、実際に行動に移さなければ法には触れない。しかし、そのような卑しい心を持つことは道徳観に反する。日本の企業では相次いで不祥事が発生しているが、そこで求めらえるのは法令遵守に加えて、高い道徳観ではないのだろうか。法律を守っていればなんでもしても良いとはならない。また、特定の職業では高い品位を保つことも法律で定めている。例えば、弁護士法では、第56条で次のように定めている。テレビに出ている弁護士は皆品位を保っているのだろうか(笑)。
(懲戒事由及び懲戒権者)
第五十六条 弁護士及び弁護士法人は、この法律又は所属弁護士会若しくは日本弁護士連合会の会則に違反し、所属弁護士会の秩序又は信用を害し、その他職務の内外を問わずその品位を失うべき非行があつたときは、懲戒を受ける。
2 懲戒は、その弁護士又は弁護士法人の所属弁護士会が、これを行う。
3 弁護士会がその地域内に従たる法律事務所のみを有する弁護士法人に対して行う懲戒の事由は、その地域内にある従たる法律事務所に係るものに限る。

3. 世界に誇る日本を取り戻せるのか
(1) 正しい歴史観

学生時代に社会で日本や世界の歴史を習う。でも、なぜ日本人が日清戦争日露戦争、さらには太平洋戦争を開始したのかという理由や背景を全く理解できなかった。授業も現代は1月とか2月でもうさらっと済ます。教師も説明することから逃げているようなオーラが出ている。質問する気にもなれない。しかし、最近は全てではないが、少しずつ分かってきたような気がする。一番の対立軸はやはり人種差別だったのだと思う。明治維新を余儀なくされた当時の世界は植民地政策が是とした時代だ。当時の大国だった清国はアヘンで欧州列国に搾取され、日本とタイ以外のアジア諸国は植民地とされた。白人から見ると白人以外の人種は人間として扱われなかった。アフリカやアジアの人たちを奴隷にしたのはその典型だ。そんな状況を打破するために、日本が立ち上がったという説がある。本当だろうか。実際、太平洋戦争を契機にアジア諸国は独立を果たした。日本はアジア諸国に軍隊を派遣したが、そこで戦ったのは植民地政策を推し進めていた欧州列国だ。最後に日本は米国にコテンパンにやられたが、もし、アジア諸国の独立が太平洋戦争の目的であったのであれば、その目的を達成したと言える。でも、そんな教育は日本ではご法度だ。

(2) WGIPの狙いと効果
なぜ日本の教育は本当の歴史観を伝えないのだろうか。その原点は、WGIPにあるという。下の写真はWikiに掲載されているWGIPの文書の一部だ。発行が1948年だ。WGPIとは、「War Guilt Information Program」の略だ。日本語ではなんと訳せばいいのだろうか。太平洋戦争終結後、GHQ(連合国軍最高司令官総司令部)の占領政策の一環として行われた「戦争についての罪悪感を日本人の心に植えつけるための宣伝計画」だ。つまり、太平洋戦争は、日本の軍国主義者が悪意を持って実行した戦争であり、その最大の被害者は国民であると洗脳するものだ。太平洋戦争の真意が人種差別との戦いであるなどという大義名分を訴求することは犯罪行為として罰せられる。都合の悪い文書は処分する。東京への無差別爆撃も広島・長崎への原爆投下という非人道的な行為も、軍国主義者が悪かったと国民に刷り込む作戦だという。そして、真面目な日本国民は70年を経過しても、このWGIPの存在すらマスコミは報道せず、学校は教育せず、日本人の自虐的な思考のみが強化されたとしたらそれは悲劇ではないだろうか。
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 出典:https://ja.wikipedia.org/wiki/ウォー・ギルト・インフォメーション・プログラム

(3) 3R5D3S
WGIPの骨子は下の図のように3つのR、5つのD、3つのSだという。WGIPの原文を読んでいないので、本当かどうか疑問だが、次のように5つのDなどは説得力がある。3つのSも今に続いているような気がする。
武装解除(Disarmament)
軍国主義の排除(Demilitalization)
・工業生産力の破壊(Disindustrialization)
・中心勢力の解体(Decentralization)
民主化(Democratization)
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(4) 核家族WGIP
このような洗脳政策は成功したのだろうか。戦後の日本の高度成長を見ると、日本はWGIPの洗脳にかかることなく、頑張って国力を高めたと言えるのだろうか。核家族化が進んだ理由をWGIPに求めるのは無理があるような気がする。しかし、江崎道朗氏によると、GHQは「神道と国家の分離」を命じる神道指令を出し、教科書から神道や神社に関する記述が削除された。確かに学校では神社のことを教わらなかった。また、戦後の住宅政策においても、2DKを基本間取りとした公営アパートが全国で建設されたが、これも日本的な大家族制度を排除し、核家族にするための政策だったという。そこまでは考えすぎではないかと思うけど、現在の日本社会のひずみの一つはこの住居政策に起因している面もあるかもしれない。

(5) 三世代世帯率と出生率
少子高齢化が進み、核家族化が進み、神棚のない家が増え、お墓が崩壊する。そんな社会に明るい未来があるのだろうか。人口は減少していているが世帯数は増えているという。しかし、それは寂しいことではないだろうか。下の図は0歳から4歳の子供のうち3世代世帯にいる割合と合計特殊出生率の分布図だ。ばらつきが多いが緩やかな相関関係があると言う感じだろうか。特徴的なのは沖縄と東京と山形だ。
・沖縄は3世代世帯が低いが出生率が高い。沖縄では二十歳の頃に子供を産んで、おばあさんが育てる。そして、子供がハタチになり子供を産むと、今度は仕事を辞めて孫を育てる。そんなシステムが機能している。なので、40歳で孫、60歳でひ孫がいるのは沖縄では目ずれしくない。良い悪いは別にしてこれは文化だろう。
・東京:3世代世帯に比率も出生率も低い。大阪や京都なども同様の傾向だ。大都市の傾向と言える。
・山形:3世代世帯の比率は高いが出生率はそれほど高くない。単に3世代を増やすだけではダメということか。
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 出典:三世代同居促進政策は有効か――データから見えてくること / 筒井淳也 / 計量社会学 | SYNODOS -シノドス-

(6) 1000年の歴史を持つ実語教の見直し
このブログでは、何度も実語教を取り上げている。しかし、一般には知られていないのではないだろうか。実語教とは、千年にわたって日本人の精神を育んできた教科書だ。戦前以前の日本人は寺子屋等で、人間としていかに生きるのか、人間とはどうあるべきかを教わってきた。しかも、その方法が素晴らしい。まず今でいう小学生の1−2年の時期に暗唱する。子供の記憶力は素晴らしい。意味は理解できなくもすぐに暗唱できる。そして、3-4年の時期には写経する。小学校に行くと子供達が筆で書いた標語などが掲載されていて、その上手さにびっくりする。自分よりは確実に上手だ。しかし、多分、昔の小学生はもっと上手だったのだろう。そして、高学年になる頃には、その意味をしっかりと理解して、実践するようになる。現在の日本の教育にもぜひ取り入れて欲しいと思う。しかし、ある学校の校長先生とそのような話をすると、実語教は素晴らしい。でも、教育勅語に対する教育委員会やマスコミの過激な反応を考えると、とても言い出せないと言われていたのが印象的だ。まだまだ時間がかかるのだろうか。
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 出典:千年にわたって、日本人の精神をつくってきた教科書を知っていますか? | 日本の歴史から学ぶ、日本人の精神性

まとめ
このシリーズのまとめのまとめだ。日本人が日本人としての誇りを取り戻し、日本人としての教えを守ることが日本人の幸福度を高めることになるのではないだろうか。世の中には、目まぐるしく変化することと、長い年月をかけて変化するものがある。インターネットやAIなどは前者の典型だろう。しかし、そのような激変する社会で生き残るには、後者の知恵が重要だ。幸い日本には歴史がある。先年も続く教科書(=実語教)を持つ国は日本人とユダヤ人ぐらいだろう。昭和15年には日本は皇紀2600年を祝った。皇紀元年とは神武天皇即位の年を元年とする暦である。世界には、救世主(キリスト)の生誕のよく年を元年とする西暦、イスラムでは開祖ムハンマドが故郷メディナに脱出した年を起源とするヘディナ紀元、釈迦が入滅した年もしくはよく年を起源とする仏歴がある。日本の後期はそれらよりも古いのはすごいことだ。世界最古の皇紀を持つ日本を日本人としてもっと誇りを持って生きていくべきではないか。WGIPの呪縛から解放されても良いのではないか。人として良く生きる方法は万国共通かもしれない。その意味では実語教のような教育をアジアや開発途上国で広めることも意義があることかもしれない。

以上

最後まで読んでいただきありがとうござます。ブログを始めて、いろいろなことを調べるたびに自らの無知を思い知る。技術士の勉強もそうだったけど、勉強するほどに知らないことが出てくる。学ぶとは、知らないことを知ることだ。ソクラテスが言ったという「無知の知」を痛感する。ソクラテスはそれ以外にも、「満足は富」とも言っている。一見、矛盾しているが、この意味は、ささやかなことに満足するところに幸福があるということだ。「満足は、自然の与える富である。贅沢は、人間の与える貧困である。」とも言っている。結局のところ謙虚な気持ちで、他人への感謝の気持ちや思いやりの気持ちを忘れずに、切磋琢磨することが大切なのかもしれない。日本人の心を取り戻すことは重要だけど、幸福度を高めることを追い求めるのではなく、自らの能力を高め、社会に貢献することに幸せを感じることが大切なのかもしれない。しかし、これではMBAの卒論にはならない(涙)。そちらの方はもう少し考えよう。今年もあとわずかだ。皆様のご多幸を心よりお祈り申し上げます。

(その5:留意事項)ベーシックインカムを政府発行の仮想通貨として国民に支給したらどうなるのだろう?

はじめに
今回のシリーズも終盤だ。ベーシックインカムを政府発行の仮想通貨として国民に支給すると、いろいろ良いことが期待できそうなことは前回記載した。しかし、世の中良いことばかりではない。良いことがあれば、必ずその反対のことがある。もしくは問題が生じないように善後策を講じる必要がある。ここでは、特に技術問題と財政問題と個人情報の保護の問題の3点から切り込んで見たい。
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1. 技術問題
1.1 実現スキーム
(1) マイナンバーとの連携

確認すると、このブログで昨年の8月に似たようなことを掲載していた。下の図はその時にイメージしたものだ。国民総番号制ということでマイナンバー(正確には個人番号制)が2015年10月から番号指定が始まり、2016年1月からは税、社会保障、災害対策の3分野で限定的に使われている。自分はまだ使っていない。どうもセキュリティに不安があり、使う気がしない。しかし、例えば、全国民を特定できるこのマイナンバーと紐付けして、自由に使える電子マネーとしてベーシックインカムが支給されると多分使うだろう。有効期限が設定されていたら勿体無いので絶対使う(笑)。このベーシックインカムの仮想通貨と日本銀行が発行する円の互換性を確保すると日本政府が宣言することが肝だろう。
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 出典:ベーシックインカムで支給されたお金の利用状況をビッグデータとして分析・活用できるのか? - LuckyOceanのブログ

(2) 仮想通貨発行額と国債発行額の関係
しかし、仮想通貨から円への変換は必須とすると、一般消費者は仮想通貨を消費せずに円に換金してタンス預金にするかもしれない。仮想通貨を円と同様に取り扱うことを政府が保証することは必要だが、その変換は最後の中央銀行と政府の間の対応に限定されるのではないか。この場合に、一定額は企業間の取引に使われるので、仮に100兆円相当の仮想通貨を日本政府が発行しても、日本政府が中央銀行に発行する国債は100兆円にはならないだろう。少なくとも消費税相当は控除されるだろうし、市場で循環する部分は控除される。しかし、それがいくらになるかを計算するのは難しい。何らかのモデルを設定してシミュレーションする必要があるかもしれない。

(3) 逆トリクルダウン
下の図は、今年の8月にこのブログに掲載したものだ。だんだん自分の過去の投稿をリファーすることが増えているのはいいことなのだろうか(笑)。トリクルダウンはアベノミクスの失敗策だ。金持ちに金をばら撒いても一般庶民にお金が回るはずがない。途中で搾取されるのに決まっている。そうではなくて、まずは全国民に金をばら撒けば、それが国民相互や企業に回って社会が活性化する。これを逆トリクルダウンと呼ぼう。ベーシックインカムの概念としてはあまり言われないけど、自分はこの効果が最も大きいのではないかと思っている。
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 出典:トリクルダウンとベーシックインカム - LuckyOceanのブログ

(4) 企業は社員への給料として仮想通貨で支払うことは可能か
国民に支給された仮想通貨は消費財の対価として企業に支払われる。企業はその原材料の購入等に仮想通貨を使えるようにする。さらには社員の給料もこの仮想通貨を使えるようにできるのだろうか。よく分からないけどあと20年もしたらキャッシュレス社会が実現しているのではないか。もしくはそのような社会を目指すべきではないか。そうだとすれば、答えは当然可能だとなる。

(5) 紙幣の回収が不要
日本銀行によると、2017年の大晦日に市場で年越した銀行券は106.7兆円(165億枚)だという。そして、千円札では1-2年、1万円札では4-5年で回収されて廃棄される。具体的には、紙幣に穴を3つ開けて、パルパーで溶かして、再生紙の原料となるらしい。でも、仮想通貨に移行して、キャッシュレス社会になればそんな作業はなくなるのだろう。
 出典:銀行券(お札)と貨幣(硬貨) : 日本銀行 Bank of Japan

(6) ATMや銀行がなくなる?!
本当にキャッシュレス社会になると、どうなるのだろう。お金を銀行でおろす必要がなければATMは激減するだろう。紙幣博物館に数台置かれているぐらいか。コンビニにもATMはなく、レジ係もいないのか。飛行機に乗ったり、電車に乗ったりするときも、キャッシュレスの精算だ。お年玉はどうするのだろう。子供の口座に振り込んだよという印の紙でも可愛い封筒に入れて、子供がそれを見て「ありがとう」と喜ぶのだろうか。ベーシックインカムの支給を受けない人は、パスポートと紐づけにした電子マネーの口座を持つことが入国の条件になるのだろうか。

(7) 外国人労働者はどうなる?
少子高齢化問題に対応するために、来年4月に出入国管理法の改正を行う。簡単な試験を受けて、合格した外国人を上限5年で受け入れる。さらに高度な試験に合格したら永住や家族帯同も認める。1993年に始まった外国人技能実習制度に基づいて、2017年には128万人が就業している。毎年20万人レベルが増えている状況だ。このペースが拡大すれば、数年後には200万人、さらに400万人と増えていくのだろうか。しかし、ここで想定している外国人技能実習生は、中国が最大で約3割だが、増加率ではベトナムが最大(40%)だ。小売や飲食サービスではネパール人も増えている。これらの人たちには、ベーシックインカムは支給されない。キャッシュレスで生活できるような対応が必要だ。
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 出典:外国人労働者に新資格、安易な拡大に危うさ | 週刊東洋経済(政治・経済) | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準

(8) 派遣型の外国人労働者の増加
外国人技能実習生が従事できる業種として農業を追加する。さらに、農水省は、「外国人の周年雇用環境を整えるには、農繁期が異なる複数の農家で働くことが可能な派遣形態での受け入れが必要とみている。」という。京都府では、国家戦略特区として外国人の就農解禁を求めている。「京野菜宇治茶の生産が行われているが、農家が高齢化し、労働力が不足している。特に農繁期に人手が必要だ」という。派遣会社が中間に入ることにはメリットもあるが、デメリットもある。最大のデメリットは働く実習生の支払いから管理費が引かれることだろう。話がずれてきたので、戻すが、日本をキャッシュレス社会にしていくには、外国人労働者への支払いなども考慮する必要があるだろう。
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 出典:https://外国人労働者新聞.com/archives/4509

1.2 インフラ
(1) ブロックチェーンは使えるのか

パブリック型のブロックチェーンは、10分ごとに処理の正当性を証明(Proof of Work:PoW)する必要があるが、これが処理の無駄、電力諸費の無駄、処理のスピードダウンの元凶となっている。しかし、下の図にあるように、コンソーシアム型やプライベート型であれば、このPoWの処理が不要なので、処理も軽く、消費電力も小さく、レスポンスも早くすることができる。個人的には本命はこちらだと思っている。政府や中央銀行(=日本銀行)、主要な都市銀行などを含めたコンソーシアム型で仮想通貨の仕組みを構築することができれば、精算処理が不要であり、システム全体としての効率性が格段に高まると期待される。
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 出典:金融ソリューション ~ブロックチェーン技術への取り組み~ - Fujitsu Japan

(2) 運用主体
仮想通貨の発行主体が政府なのか、中央銀行なのか、都市銀行なのかという問題も、先述のように、これら関係機関を含めたコンソーシアム型にすれば解決するのではないか。ただし、その場合にもサイバー攻撃への対応策やセキュリティの確保などの技術的な問題はあるだろう。

2. 財政問題
2.1 支給額

財源の問題とセットだが、一体いくら支給するのかが問題だ。一般的には毎月7-8万円相当といったレベルを基本にする議論が多い。1年間で100万円弱。1億人として100兆円。若くして結婚して、もしくはその前に子供ができて3年で300万円。プラス仕事すればなんとか生きていけるだろうか。しかし、妥当なレベル感を決めるのは、財源の問題だけではなく、それが適正かどうかと、過剰なインフレ誘導にならないかという観点でも検討が必要だろう。

2.2 インフレ懸念
Wikiによるとハイパーインフレーションの定義は、3年間で累積100%(年率約26%)だ。つまり、3年で物価が倍になるような事態だ。では、過去にこんな事態があったのかを調べたら、18世紀のフランス革命直後に起きていた。また、19世紀の南北戦争直後にも米国で起きていた。20世紀初頭の第一次世界大戦直後では、ドイツ帝国で1兆倍、ロシア帝国で600億倍という異常事態が起きた。これらのハイパーインフレの原因は、戦争の賠償金を払うための財政悪化であり、政府紙幣の信頼低下だ。逆に言えば、この異常事態で銀行が倒産したり、銀行券や政府紙幣が信用できないために、イギリスでは、中央銀行に紙幣発行権が集約された。ベーシックマネーの支給額を高めるとインフレ率が高まるが、ハイパーインフレが起きる可能性は極めて低いと考えるべきだろう。

2.3 福祉予算の削減?!
ベーシックインカム低所得者向けの福祉制度と考えて、それら福祉制度を見直すことで原資にするという考え方をする人がいるが、ベーシックインカムを導入しても格差の是正にはならない。単に所得が水平移動で増額するだけだ。同時に小さな政府とするために福祉制度をシンプルにする必要はあるかもしれないが、なくすことにはならないと思う。一概にはいえないが、現在の制度は若年層よりも高齢層に手厚いのではないか。

3. 個人情報の保護
3.1 匿名加工情報
(1) 個人情報保護法で個人情報は保護されるか?!

2017年5月に施行された改正個人情報保護法では、匿名加工情報の導入が盛り込まれた。匿名加工情報とは、特定の個人を識別できないように加工した個人情報のことだ。そして、その目的は、一定のルールの下で本人の同意を得ることなく第三者提供を可能とすることだ。つまり、特定加工情報として、個人情報に該当する内容は削除したので、マーケット分析などで自由にデータを使えるという仕組みだ。しかし、これははっきり言ってざる法だろう。なぜなら、データ量は指数関数的に増大し、その分析技術も進歩すると、直接的な氏名とか住所がなくても、個人を特定できるようになる。それが認知されれば、規制が強化されるのかもしれないが、リアルタイムではない。法整備される頃にはさらに技術は進歩していて、個人を特定できるようになる。そんなことを心配しているのは自分だけだろうか。
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 出典:匿名加工情報とは?作成時の基準・義務・事例をまとめて解説

(2) 情報格差の拡大懸念
現在は情報時代だ。情報を制するものが経済を制する。最近の日本経済が振るわないのも、他国に情報を制されているのではと危惧する。LINEは日本で始まったサービスだけど、その提供企業の親会社は韓国のIT企業だ。韓国にも個人情報保護法はあるが、日本よりもザルという。そもそも日本の哨戒機にレーザを放射して、ロックオンするような国を信用すべきではない。ロックオンをするということは、例えばロシアンルーレットではないが、拳銃の安全装置を外して、こみかみに当てるようなものだ。刑法で言えば殺人未遂ものではないか。また脇道に逸れたが、経済格差以上に懸念すべきは情報格差だ。しかし、全国民に仮想通貨を支給して、その利用状況をビッグデータとして蓄積して、それを自由に見れるとしたら、マーケット分析の制度は格段に上がるだろう。同時に悪用されないための仕組みの整備も喫緊の課題だ。

3.2 ビッグデータは誰のもの
(1) GAFAの脅威

GAFAとは、GoogleAmazonFacebookAppleの4社のことだ。この4社が情報を独占し、他社が市場参入できない状況を「GAFAの脅威」という。これに対応するために、官民データ活用推進基本法案が2016年に施行された。日本企業がGAFAの後塵を拝している状況を打破して、日本の自治体や企業がビッグデータを活用できるようにすることが目的だ。しかし、日本人の危機感のなさは喜劇的だ。日本独自のSNSをもっと育成しない限り、GAFAの独走を止めることは難しいのではないか。
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 出典:公取委:不透明GAFAに不信 「日本企業、巨大ITの下請け」 年明け調査 - 毎日新聞

(2) 133億円のボーナス
日産自動車の元会長の年収が10億円ではなくて20億円だった等々で問題となっている。しかし、米国のグーグルは、自動運転車のソフトを開発したソフトウェアエンジニアAnthony Lewandowskiに対して、1億2,000万ドル(133億円)のボーナスを与えたと言う。Googleは自動運転車が実用化すれば1兆ドルの稼ぎを得られると見越したという。ただ、よく調べると美談ではなく、Uberとの知財裁判のドロドロ劇が裏にあったようだ。いずれにせよ、日本ではあり得ないレベルの金額だ。
 出典:Google Paid $120 Million Bonus to Car Software Engineer | Cars News Online

(3) サイロ・エフェクト
脱線ついでに、バズワードをもう一つ紹介したい。最近、サイロという言葉を聞くことが多い。サイロとは、トウモロコシ畑などで穀物を格納する塔のことだ。日本語で言えば、大企業病として有名なセクショナリズムとか、細分化されて全体最適化ができない状態だ。ファイナンシャルタイムズ誌アメリカ版編集長のジリアン・テットの力作だ。年末年始に読むにはちょうど良いかも(笑)。
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まとめ
留意事項をまとめようとしたが、どうも脱線してしまう。ポイントは、コンソーシアム型のブロックチェーンを政府と日本銀行都市銀行が連携して構築・運用することが可能かどうか。現状は都市銀行であるMUFGの検討が先行しているが、中央銀行や政府も手を拱いているわけではないだろう。しかし、このようなコンソーシアム型が実現した時に、結果として集まるビッグデータを誰がどのように運用するのか。悪用されるリスクはないのか。サイバー攻撃を防げるのか。有効活用できるのか。課題は山積だ。しかし、ブログを書いている感じたのは、要は日本がキャッシュレス社会を本気で構築する気持ちがあるのかどうかがポイントのような気がした。中国や途上国は必死で進めている。高齢化の弊害が実はこんなところに出ているのか。サイロエフェクトではないが、個別最適化ではなく、全体最適化を目指すべきなのに、こういう青写真を描くことは日本人は苦手なのかもしれない。もしくは、総論賛成だけど、各論で反対するという構図で前に進まないのだろうか。大切なことは一歩前に踏み出すことだと思う。

以上

(その4:提案)ベーシックインカムを政府発行の仮想通貨として国民に支給したらどうなるのだろう?

はじめに
今回のシリーズも4回目になった。この提案が本丸だ。しかし、実際は提案というよりは仮説だ。日本政府発行の仮想通貨としてベーシックインカムを提供するなんてことは自分が決められるわけがない。まだまだ日本社会の中で議論を尽くして理解を求めていく必要がある。そもそももっと良い方法もあるかもしれない。ベーシックインカムのトライアルを進めているフィンランドでも、そのトライアルを年内で終了させて、今後は支給対象を限定した福祉制度に向かうのではないかという報道もある。その意味ではまだまだ何が本命かは見えない。ここでは、このような提案がもし実現したら、どんな効果があるのを評価していきたい。つまり、設定した仮説が本当に期待したような効果を実現するかを検証することが重要だ。でも、どうやって検証すれば良いのだろう。何か経済モデルを設定して、計算するのだろうか。アンケートをとって行動分析をするのだろうか。ビッグデータの活用事例を示すのだろうか。首尾よくMBAコースに入学できたら、そんな問題意識を持って研究を深めていきたい。
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1. ベーシックインカムを政府発行の仮想通貨で実現する。
1.1 ベーシックインカムの是非

ベーシックインカムについてはまだまだ賛否が分かれている。賛成派と反対派の代表的な意見は次に示す。
(1) 賛成派の意見
・複雑な福祉制度を整理して、一律の制度にすることで小さな政府を実現する。
・財源問題はなんとかなる。少子化に歯止めがかかる。
・国民の生きる権利(日本国憲法第25条の生存権)を守るには必要になる。

(2) 反対派の意見
・そもそも原資がない。財源をどうするのか。
・一律に支給したら働かなくなる。
・福祉制度を見直すことで対応できる。
ベーシックインカムの必然性がない。

(3) 年収による違い
マンナビが年収を限定せずにアンケートをとると賛成派が6割を占めたが、年収1千万円以上に限定すると、賛成派は3割に留まった。これは何を意味しているのだろう。社会で重要なポジションについていて、高額報酬を得ている人はベーシックインカムの意義を理解しながらも、不要と判断するのであれば、議論が進まないのも当然かもしれない。
 出典:年収1,000万円の人は「ベーシックインカム」についてどう思っている? | マイナビニュース

1.2 政府発行の通貨
(1) 中央銀行の存在意義

現在の日本の紙幣は日本銀行が発行し、硬貨は造幣局が製造している。2017年度の発行金額ベースで紙幣は15兆円ほどだが、貨幣は2800億円ほどと2桁ほど少ない。政府が紙幣を発行することは過去にもあったようだが、日本銀行日本銀行の株主から見ると許容できるものではないだろう。しかし、そもそも日本銀行は、日本銀行法に基づき設立された特別法人だ。日本銀行のホームページを見ると、日本銀行法改正の理念として独立性と透明性を挙げている。これはつまり、日本銀行は独立して、そして透明性を高めることが課題ということだろう。株式の過半数は日本政府が有しているが、100%ではない。独立性を高めるのであれば日本政府の出資比率を高めるべきではないのか。また、透明性を高めるなら、出資者をオープンにするべきではないのか。そんなことはとても言えない状況にあるのだろう。

(2) 政府発行紙幣
中央銀行ではなく、政府が直接政府の紙幣を発行することは可能なのだろうか。日本銀行法の第46条において、「日本銀行が発行する銀行券は法貨として無制限に通用する。」とある。この無制限が何を意図しているのかは不明であるが、排他的にとは書かれていない。実際、戦時中には政府が発行した軍票政府紙幣の一つと言える。日本では江戸時代には幕府が発行する貨幣とは別に藩が藩札を発行していたという。明治維新後も明治政府は政府紙幣を発行している。そもそも19世紀初頭まではイングランド銀行も単なる大企業の一つだった。しかし、19世紀初頭の金融恐慌で多くの銀行が破綻したため、1844年にイングランド銀行のみが銀行券を発行しても良いという条例ができたのが中央銀行の始まりだ。日本銀行が設立したのが1882年なので、まだ136年ほどの歴史だ。また、米国には米国銀行という中央銀行はない。全米の主要都市に散在する連邦準備銀行(FRB)を連邦準備制度理事会が統括するという形だ。
 出典:連邦準備制度 - Wikipedia

(3) 日本政府が独自の仮想通貨を発行する可能性
ベネズエラやロシア、トルコなどが政府発行の仮想通貨について検討している。日本では、具体的な動きはないが、日本銀行が「各国の動きを丹念にフォローし考察を深める」としているという。また、三菱UFJは「coin(旧MUFGコイン)」の発行をCEATEC JAPAN 2018でも発表した。1コイン=1円だ。日本で仮想通貨を発行する主体が都市銀行なのか、中央銀行なのか、政府なのか。現状では都市銀行が一歩先行しているが、予断を許さない。
 出典:世界各国で独自仮想通貨の発行がはじまる!? | トウシル 楽天証券の投資情報メディア

(4) 日本政府がベーシックインカムを仮想通貨で発行する可能性
これは難しい。まず日本政府はベーシックインカムを導入するとは言っていない。日本政府が仮想通貨を発行するとは言っていない。ましては、ベーシックインカムを日本政府発行の仮想通貨で開始するとは誰も言っていない。少なくとも直近5年とかではないだろう。しかし、2030年とか、2040年の時代において日本の経済状況が非常に苦境に陥ったりすると、その打開策として採用される可能性はゼロとは言えないだろう。 現状では非常に可能性の低いオプションかもしれない。ここではその可能性を議論するのではなく、それが実現したと仮定するという前提で、以降の議論を進めたい。

2. 消費者の購買力がアップして、経済が循環する。
(1) お小遣いカード

想像してほしい。2030年になるのか、2040年になるのかは別にして、日本国民全員が自由に使える一定の金額が仮想通貨として利用可能となる。イメージ的には、スマホで何かをかざすのか、特定のカードをかざすのか、それともスマートウオッチのようなものをかざすのかは別にして、商業施設や飲食店などで使える。支給されるベーシックインカムに対して有効期限を設けるのかどうかは議論のあるところだけど、個人的には期限をつけた方が良いと思う。使える権利が消滅するとすると、その期限前に使おうとするのが人間の性だろう。つまり、消費が喚起される。タンス預金を許さない。しかも、日本国民1億2,500万人が仮想通貨を使うのであれば、それに対応するインフラ整備が必要だ。出来るだけ低廉なコストで使えるようにすることが求められる。その頃には実質のキャッシャレス社会になっているのだろう。

(2) 3つのメリット
ベーシックインカムの議論では財源問題が避けて通れない。しかし、政府発行とすることであれば、国債を発行する必要がない。政府としてやると決めて発行するだけだ。そのタイミングの消費税が10%に留まっているのかどうかはわからないが、仮に10%としても政府には支給した金額の10%相当は戻ってくる。ベーシックインカムで消費が喚起されれば、それを供給する企業は潤い、利益をだす。そして、法人税を支払う。さらに、ここからは過激にならないようにバランスを取る必要があるが、政府としてインフレ誘導が可能だ。過剰なインフレは厳禁だし、適切なインフレ率を見極めるのは難しいが、ベーシックインカムの支給額と期待されるインフレ率には一定の相関関係が生じるだろう。仮に年間5%のインフレを見込むのであれば、政府の負債はその分実質的に目減りすることになる。つまり、適切に運用されれば、国民もハッピーだし、企業もハッピーだし、政府もハッピーとなり得るのではないか。

(3) 小さな電子政府
エストニアは電子立国だ。ICOエストコインにトライしようとしているがECの加盟国でもあり、独自の通貨ではなく、ユーロドルを使っているため、反対派の包囲網の中で苦戦しているようだ。厳しいかもしれない。しかし、このエストニアの素晴らしいことは、コンピュータにできることはコンピュータに任せて、小さな政府を実現している点だ。安倍首相もエストニアを含めてバルト3国を訪問して、連携しようとしている。日本の政府をどこまで効率化できるかは微妙だ。企業は経費削減を進めて、もうカラカラの雑巾の状況だが、政府はまだまだ効率化の余地が大きいだろう。しかし、公務員の削減には反対が強いだろう。現在の公務員をレイオフしてもベーシックインカムがあればいいというのは暴言だろう。やはり、一定の職に就けるように、実体のある意義のある仕事につけられるような配慮と調整をしない限り、小さな政府は実現しないだろう。では、どんな仕事があり得るのだろう。

3. 消費者の購買データをビッグデータとして活用する。
(1) ビッグデータの分析業務

日本国民が使う仮想通貨のデータはすべて政府が管理するシステムで運用することになるだろう。そのシステムには時々刻々と日本国民が使うデータが蓄積される。まさにビッグデータだ。日本の企業がマーケットを分析するためには喉から手が出るほどほしい情報だ。そのようなデータを分析するような業務、データから知見を導き出すような業務、そんなデータアナリストのニーズは今後ますます高まるだろう。個人情報が流出しては困るので、セキュリティ関連の業務も増えるだろう。これらの業務を誰がやるのか。

(2) 小さな政府とこれを実現するシンクタンク組織の受け皿
ここは異論が出るところかもしれないが、やはり公務員の業務を思いっきり効率化するためには、現在の省庁の構成が最適とは限らない。小さな政府にするための再編成が必須だろう。その中で捻出した人材を外部団体で引き受ける仕組みもやはり必要だろう。公務員になる人は優秀で真面目な人だ。そんな優秀で真面目な人材がシンクタンク的な業務にトライすることはできないものか。もしかしたら、複数のシンクタンクと特約を結んでベーシックマネーで蓄積したビッグデータを解析するような仕組みにして、そこに大量に公務員を引き受けてもらうことが現実的なのかもしれない。

(3) 日本銀行はいつまで必要なのか
想像してほしい。今後20年とか30年とかの先にまだキャッシュを使っているのだろうか。骨董品的に紙幣を鑑賞することはあっても、日常の経済活動はほとんどがキャッシュレスになっているのではないか。その時に日本の国債はどの程度残っているのだろうか。一般会計の25%が国債関連の費用に飛んでいるような事態は改善されているのだろうか。

まとめ
ベーシックインカムを日本政府が発行する仮想通貨で実現することは可能なのだろうか。そこを議論してもなかなか答えは出ない。そのため、あるタイミングXにおいて、仮にそれが実現したとして、いったいどのようなことが起きるのかを想像することはできるだろう。一定のモデルを作ればシミュレーションすることも可能だろう。ただ、その先にある日本社会が本当にハッピーかどうかは実は微妙かもしれない。ベーシックインカムを支給するという甘い言葉の先にあるのがインフレだとしたらそれは悲劇だ。公共投資は必要だし、金利政策も重要だけど、今後の景気対策や景気調整はそれだけでは難しいだろう。ベーシックマネーは、その時の重要かつ有効な施策となりうるのではないか。また、同時に社会の仕組みの効率化は待った無しだ。政府も例外ではない。無駄を排除する一方で、日本人としての尊厳を持って生存する社会保障を充実する。かつての日本が輝いたように、日本社会を磨いていく。そのためには心の手当や、日本人としての原点を踏まえて、一人一人の人格を高めることも求められるのではないだろうか。

とりとめのない結論になってしまったが、現時点の自分の知見と能力ではここまでです。ご容赦ください。

次回は、留意点についてトライしたいと思います。

(その3:課題)ベーシックインカムを政府発行の仮想通貨として国民に支給したらどうなるのだろう?

はじめに
その1ではGDPと幸福度の関係について概観した。その2では最近の技術動向や社会動向としてベーシックインカムや仮想通貨、政府紙幣等について述べた。ここでは、現在の日本の課題を3つの視点から整理してみたい。具体的には、国民の視点、企業の視点、国家の視点の3つにする。今の日本社会の課題を炙り出すことはできるだろうか。
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1. 国民の課題
国民の課題といっても千差万別だ。一言にまとめるのは難しい。大きく言えば、経済格差の問題、技術革新の問題、そして心の問題を取り上げたい。

(1) 経済格差の問題
かつて高度成長期には、1億人総中流と呼ばれていた。しかし、下のグラフで見ると、当初所得では、1972年の0.35から2011年には0.55を超えている。ジニ計数とは、社会における所得分配の不平等さを測る指標であり、0から1の範囲である。値が高いほど格差が拡大していて、Wikiでは社会騒乱の警戒ラインは0.4と記載されている。2011年の再配分所得でなんとかギリギリ0.4を下回っているが、現在はどうなのだろうか。厚労省が発表した「所得再分配調査」の結果によれば、2014年のジニ係数0.5704と過去最高を更新している。所得格差を是正することは可能なのだろうか。
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 出典:https://www.murc.jp/thinktank/rc/column/

同じ30代の若者でも、その所得の格差は下の図のように広がっている。ネット難民の平均所得は100万円に対して、高額所得者は1000万円を超えていて、10倍の格差が30代ではっきりと出ている。いわゆる負け組と勝ち組が30代にははっきりと分かれているということなのか。
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 出典:1000万円稼ぐ勝ち組30代とワーキングプア30代の年収格差 | 格差脱出研究所

(2) 技術革新に伴う失業問題
三菱総合研究所の試算によると平成42年には、AIやロボット関連で270万人の新たな仕事が増える一方で、工場や販売、一般職での740万人の仕事がなくなり、差し引きでは240万人の仕事が減少すると予測されている。ピンチはチャンスだ。技術革新の変化をチャンスと捉える積極性としたたかさが必要なのかもしれない。最近ではロボットコンサルタントやロボットアドバイザという職業もできつつある。しかし、そんな新しいこよにチャレンジできる人よりは、変化に対応できない人の方が多いだろう。
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 出典:AIが職場を奪う 雇用240万人減、GDP50兆円増 平成42年試算 - 産経ニュース

(3) 心の問題
少し古いが2007年のUNICEFの調査がショッキングだ。下の図のように日本の子供は優秀だ。特に科学能力や数学能力は高い。しかし、自分は寂しいと考えることも比率や単純労働の就業希望比率がダントツに高い。特に後者は向上心のなさを示す。いつの間に日本人の子供たちはこんなに寂しく、向上心のない子供になってしまったのだろうか。学校の成績だけで子供を評価するような教育システムの歪みなのだろうか。全ての子供たちが自分の得意分野を認識し、自分を成長させる教育を受けるような風に変革することは難しいのだろうか。情報通信を活用して、昔の寺子屋のようなカスタムメードの個別教育を実現できないものか。教育問題は根が深いが非常に重要な課題だ。
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 出典:いじめ問題:日本の子供の幸せ感はなぜ高くないのか(TEDとUNICEFレポートより) - LuckyOceanのブログ

2. 企業の課題
企業の課題も一口では論じ切れない。でもあえてそこに切り込むとすれば、(1) 労働生産性が低い、(2) 加速する技術革新の問題、(3) グローバル市場での競争激化の問題だろうか。

(1) 労働生産性が低い
下のグラフは東洋経済社の分析だ。日本はスキルは高いが生産性が低い。対局は米国だ。社員のスキルは低いが、生産性は高い。なぜこのようなことが起きるのだろうか。ノルウェイのようにもっ生産性を高めるべきなのか。それは従業員ではなく、経営者の能力の違いなのか。しかし、経営者の能力といっても、日産自動車の元会長のような豪腕経営者を良しと見るのかダメと見るのかという問題もあるだろう。生産性が高まらないと、結果として収入も伸び悩み、消費の購買力が低下するような悪循環に陥っていくのではないだろうか。
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 出典:日本を「1人あたり」で最低にした犯人は誰か | 国内経済 | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準

(2) 加速する技術革新の問題
ビジネスモデルで見ると、いわゆるプラットフォームビジネスはGAFAに代表される米国企業が牽引している。SNSは日本でも立ち上がっていた。例えばmixiは2004年にスタートした。まだスマホが普及する前でPC利用者では強烈なファンがいた。自分も少しハマったことがある。しかし、スマホが立ち上がる段階で失敗した。性能を強化するための投資ができなかった。なぜ米国ではふんだんに投資できたのか。例えば、Facebookは2004年にPeter Thielから50万ドルの資本を受け入れた。2005年にはThiel and Accel Partnersから1,270万ドル、そして2006年に2750万ドルの資金を調達した。これらの投資家はFacebookで情報を効率的に集めることを理解し、その価値を理解し、それに投資をしたということなのだろうか。「タダほど高いものはない。」日本人はLINEなどの無料のSNSを無防備に利用するが、その裏で行われているかもしれないリスクをしっかりと認識すべきだ。
 出典:REVEALED: Facebook’s CIA Connections... - The Daily Reckoning

(3) グローバル市場での競争激化の問題
部品の開発・製造が悪いことではない。しかし、どうも最近の日本の産業は、電機メーカーを中心に、総合製品の開発で後塵を拝していることが多い。最近は日産のゴーン事件がホットだけど、車の総合メーカーとしての日本のポジションを維持・拡大することは簡単ではない。自動運転のEV(電気自動車)に対しては、GoogleAppleも虎視眈々と市場を狙っている。例えばEVではテスラの動きは激しい。市場を制覇する雄となるのか、頓挫してしまうのか。予断を許さないが、そのような元気な会社がもっと日本からも出てこないものだろうか。
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 出典:Google Maps will now help you find EV charging stations - The Verge

3. 国家の課題
最後の国家の課題はこれまた大変だ。そんなことを論ずる見識も能力もない。単なる技術者だけどあえてトライするとすれば、(1) 悪化する財政、(2) 少子高齢化への対応、(3) 環境問題の三点だろうか。

(1) 悪化する財政
日本の国家的な課題の一つは財政問題だろう。一般会計の974兆円だが、収入の3分の1が国債であり、支出の25%は国債費関連だ。これがもし家計なら、例えば974万円の年収だけど、うち3分の1が借金での調達で、その25%が借金の返済等に回っている。これはもう末期的な症状ではないのだろうか。
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 出典:これからの仮想通貨の可能性 - LuckyOceanのブログ

(2) 少子高齢化への対応
少子高齢化の問題は、本来は少子化の問題と高齢化の問題で分けて議論すべきだ。少子化についていえば、非常にデリケートな問題だけど、未婚が問題なのではなく、中絶の問題だという指摘がある。子供を産んで育てることが経済的な理由から困難なために世の中にデビューできない赤ちゃんを救えないものなのか。また、高齢化について言えば、元気な高齢者が生きがいを持って生き生きと生活できるような社会を目指すべきなのではないだろうか。いわゆる健康寿命を高めるためにはどうすればいいのだろう。高齢者の自営業が増えているが、自立できる人は少ないのだろうか。
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 出典:高齢化を考える。 - LuckyOceanのブログ

(3) 環境問題
環境問題は産業革命とともに拡大した。日本でも、明治時代の初期に栃木県の足尾銅山からの鉱毒渡良瀬川を流れて関東地区に広がった。渡良瀬川といえば、森高千里の名曲を思い浮かぶが、当時は大変だった。川の魚は死に絶え、農作物も被害を受けた。その時に国会議員だった田中正造氏は、鉱毒事件の解決と被害者の救済に奔走した。その頃の思いを綴ったのが、下の図だ。産業革命とともに、文明は本当に良くなったのか。真の文明は自然を殺さず、地域を殺さず、人を殺さない。これは痛烈なメッセージだ。
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 出典:https://www.env.go.jp/policy/hakusyo/zu/h25/pdf/1-2.pdf

まとめ
現在の日本の課題を切り取ることは難しい。国民と企業と国家の3つの視点でトライしたが、いずれもまだまだだ。もっと他の課題もあるし、重要度や緊急度などの観点からの整理も有益かもしれない。しかし、まあこんあな課題があるだろうというレベルでの分析しかできていないが、今日はここまでにしたい。

以上

(その2:前提条件)ベーシックインカムを政府発行の仮想通貨として国民に支給したらどうなるのだろう?

はじめに
前回は、GDPと幸福度の関係を中心になぜ日本人の幸福度が相対的に高くないのかについて問題提起した。ではどうするかを考える前に、現在日本及び世界で起きている新しい潮流についての理解を深めておきたい。具体的には、下の図に示すような3点だ。
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1. ベーシックインカムの可能性
(1) フィンランドの動向

ベーシックインカムについては、世界でも賛否が分かれている。ある大学の学生に質問したところ、意外と否定的な意見や慎重な意見が多くてびっくりした。ベーシックインカムに前向きな国の代表は北欧のフィンランドだ。そう国民の幸福度がNo.1の国だ。しかし残念ながら現在やく2000人の失業者を対象に実施しているトライアルは2018年12月に終了する。その調査結果は早ければ2019年にも発表される見込みだ。どんな結果なのだろう。フィンランドでは、失業率が8.5%と高く、その保証金が高額で財政負担になっているという点もある。フィンランドの議会は、失業者の就業意欲を高めるために、「失業者に対して最低18時間の労働を行うか、3カ月間の訓練プログラムに参加すること」を条件に失業手当を支給するが、そうでない場合には失業給付を減額するという。フィンランドには「派遣社員」の仕組みはないのだろうか。昨年の夏にヘルシンキに立ち寄った時には、昼間から食事をエンジョイするフィンランド人の優雅な生活にびっくりしたのを良く覚えている。
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 出典:フィンランドへの旅立ちと7つのトピック - LuckyOceanのブログ

(2) 日本での審議の動向
日本では、ベーシックインカムの議論はされているが、それほど盛り上がっていない。強いて言えば、2017年10月に小池都知事希望の党を立ち上げて、公約としてベーシックインカムを掲げたことだ。しかし、調べると、これを提唱した
木内氏が若狭氏に「経済政策の中にベーシックインカムを入れてくれ」と訴えたらしい。そしたら公約の中に入っていた。しかし、希望の党がどこまで真剣に考えたか不明だし、小池代表もどこまで理解していたか不明だったようだ。日本はまだまだそんな状況なのだろう。希望の党は撃沈し、ベーシックインカムも撃沈した。
 出典:希望の党「ベーシックインカム公約」発案者を直撃——実現可能性を検証した | BUSINESS INSIDER JAPAN

(3) 深刻な不況に遭遇した時の切り札か
日本で、ベーシックインカムが導入されるとしたら、深刻な不況に陥り、公共投資や、金利政策をしても、不況から脱出できず、国民の不満の声がピークに達して、政権が交代するような時に、野党が思いつきでベーシックインカムを提案して、それにマスコミが同調するという末期的な事態になった時だろうか。一般に、火事になるぞと火事の危険性を説く人よりも、実際に火事になった時に鮮やかに火事を消火する人の方が注目され、評価されるという傾向がある。ベーシックインカムの実現は経済状況が末期になってからでも、ベーシックインカムの導入の準備は経済が健康な段階から進めるべきだろう。
 出典:http://www.mamapapa.net/os/files/thesis20120501.pdf

2. 仮想通貨の可能性
(1) 現金で支給するのか

ベーシックインカムのトライアルが各国で行われている。大規模なのはフィンランドの2000人だが、米国のカリフォルニアでも市民100人に対して、毎月500ドルを無条件で支給するというトライアルが行われている。受給者の行動がどのように変化するかを調査するのが目的だ。そもそもベーシックインカムは1960年ごろに盛り上がり、2010年ごろに見直しが掛かり、現在に至っている。あまり根拠はないが実現するのは2060年ごろなのかもしれない。しかし、その支給がキャッシュというのは芸がない。もう少し工夫できないものか。日本で現金を支給しようとすると、その分の国債を発行し、さらにその金利を払うという悪循環が加速する。それは避けたい。
 出典:アメリカでベーシックインカムの検証がスタート。デメリットや財源はどうなるのか? | ライフハッカー[日本版]

(2) クーボンで支給するのか
消費税率を8%から10%への増税に合わせて、「キャッシュレス決済した消費者へのポイント還元」が検討されている。しかし、これはいわゆる中小小売店で消費者がキャッシュレスで商品を購入した時に、消費者に対して、購入額の2%をポイントで還元するという。政府は、この2%の還元額相当を別途業者に補填するという。そんなにうまくいくのだろうか。卸業者が不当に利益を得ることが懸念されているが適正に運用できるのだろうか。話が本論からずれてしまったけど、クーポンのようなもので支給するというのは、一見すると簡単そうだけど、そのクーポンの精算のための費用が増大しそうな気がする。
 出典:キャッシュレス浸透につながる?消費税増税時「キャッシュレス決済で2%還元」と報道 - IRORIO(イロリオ)

(3) 政府発行の仮想通貨で発行するのか
Wiki政府紙幣を調べると、「政府紙幣とは、「通貨発行権」を持つ政府が直接発行する紙幣、または、持たない場合において中央銀行が発行する銀行券と同じ法定通貨としての価値や通用力が与えられた紙幣のことである。」とある。さらに、「国家紙幣ともいう。近年、不況対策としての通貨発行益をめぐって、さまざまな議論を呼んでいる。」とある。一般には政府が歯止めなく政府紙幣を発行するとインフレ懸念があると聞くが、実際にどんな議論があるのかは不明だ。通常Wikiでは、言語を選択できるが、政府紙幣は日本語のみだ。なぜだろう。

(4) CBDCと政府発行のデジタル通貨
仮想通貨というと、中央銀行のような中央集権ではなく分散型の通貨を目指しているものだ。しかし、中央銀行も負けてはいない。BISのホームページを見ると、中央銀行がCBDC(Central bank digital currencies)と呼ぶデジタル通貨を発行することが検討されている。中央銀行の狙いは、通貨の発行権を死守することだ。みすみすその利権を手放すことはあり得ない。しかし、日本でも紙幣は中央銀行である日本銀行が発行しているが通貨は造幣局が発行している。デジタル通貨も造幣局が発行すればいいじゃないかという意見もあるだろう。その場合には、日本銀行に対して借金証書である国債を発行してもらう必要もないし、その国債に対して金利を払う必要もない。ただ、課題はいかにして歯止めをかけるかだろう。
 出典:Central bank digital currencies

(5) ブロックチェーンの分類
一般にビットコイン等の仮想通貨はブロックチェーンを用いている。しかし、ブロックチェーンには下の表に示すようにいくつかのタイプがある。いわゆるパブリック型は非中央集権であるが、その反面マイニング処理を競う必要がある。このための消費電力は大変な量だ。しかし、コンソーシアム型やプライベート型であれば、マイニングを競う必要がないため、処理が軽くできるし、迅速だ。今後の本命はコンソーシアム型やプライベート型ではないかと個人的には思う。
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 出典:金融ソリューション ~ブロックチェーン技術への取り組み~ - Fujitsu Japan

(6) 政府発行のデジタル通貨
本当に実現可能なのかはもう少し検証する必要がある。しかし、海外では実例も出ている。例えば、ドバイでは、政府発行の「emCash」が発行されている。シンガポールでは政府がデジタル通貨「Ubin」を発行している。スウェーデンでは「eクローナ」、カンボジア政府は「Entapay」、エストニアは、「エストコイン」の発行を検討している。それぞれ難問も多いが色々と模索している。日本政府も考えているのだろうか。
 出典:世界各国で独自仮想通貨の発行がはじまる!? | トウシル 楽天証券の投資情報メディア

3. ビッグデータの蓄積と活用
(1) デジタル通貨のメリット

政府がデジタル通貨を直接発行して、市場に流通する時代になるのだろうか。その場合のメリットはどんなことがあるのだろうか。わかりやすくて言えばコスト削減効果と価値創造効果があるだろう。

(2) コスト削減効果
お金が社会に流通する基本は信用だ。日本銀行が発行する1万円札なら大丈夫と思うから国民は安心して使える。それと同じように信頼できる仕組みができれば、お金となる。高性能なサーバーやシステムの構築は必要だが、紙幣を発行する必要がないのは究極のコスト削減だろう。いわゆる限界費用ゼロ社会の到来と言えるかもしれない。

(3) 価値創造効果
デジタル通貨の効果は単に費用の低減だけではない。どのような仕組みにするかにも依存するが、基本的に情報を処理する仕組みなので、その情報自体が価値を生み出す。もちろん個人情報の保護も必要だが、日本社会のなかでデジタル通貨がどのように使われているかを全て把握できるメリットは無限だ。これは現在の物理的な紙幣では難しい。しかし、デジタル通貨なら可能だ。そして、そのようなビッグデータの運営は誰に任せるべきなのだろうか。日本政府か、中央銀行都市銀行か。これは難しい問題だ。市場が決めるのだろうか。これだけで大学院レベルの研究テーマになりそうだ。

まとめ
なかなかまとまらない。ベーシックマネーと仮想通貨と政府紙幣の概念を組み合わせることが必然なのかという根本的な問いを受けそうだ。それが本当に必然なのかどうかと、そんなことが可能なのかという議論が喧嘩しそうだ。個人的にはこの部分は議論ではなく、前提条件として設定して、次の議論に進みたいが、そんなことを許してもらえるものだろうか。難しい(汗)。

(その1:幸福度とGDP)ベーシックインカムを政府発行の仮想通貨として国民に支給したらどうなるのだろう?

はじめに
来年4月から大学院大学MBAコースに通うことを考えている。しかし、入学には、入学試験もあるが、それ以上にプロジェクト企画書のようなものを提出する必要がある。これは、MBAの2年目の研究論文のテーマの基礎となるものだ。もちろん、提出するプロジェクトと実際に研究するプロジェクトは異なっても良いし、異なる人の方が多いそうだ。どちらかというと学生の興味を理解し、本当に当校で学ぶのが良いのか、他校の方が良いのかを確認するためらしい。でも、断れれるとショックだ。テーマも大切だけど、論理性や文章力を見るようだ。今、考えていることをちょっと披露したい。提出する前までには、もう一つの代案を考えて、比較した上でどちらかを提出するつもりだ。何回かに分けて投稿したい。

国連による幸福度調査
GDPと幸福度には正の相関関係がある。日本のGDPは世界3位を堅持している。しかし、日本の国民の幸福度はこの相関関係に乖離して低い。国連の発表の幸福度調査によると日本の幸福度は2016年度で46位、2017年度で51位で、2018年度で54位と低下した。G7の中では最低だ。下の図で見るように、シンガポールやマレーシア、タイなどのアジア諸国よりも低い状況だ。なぜなのだろう。
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 出典:Malaysians rise in world happiness ranking, now just below Singapore | Malaysia | Malay Mail

幸福度ランキングの上位国
国連の調査によると北欧が上位を独占している。この調査は2012から開始しており、すでに6年目だ。特に上位6位までは全て欧州国だ。7位にカナダ、8位にニュージーランド、10位に豪州だ。スウェーデンも9位だが、なぜ同じ北欧で差がつくのかが木になるところだ。今回は156ケ国を調査したが、下位ではアフリカ諸国が続く。例えば最下位の156位は東アフリカのブルンジ共和国、155位が中央アフリカ共和国、154位は南スーダン共和国、153位がタンザニア連合共和国とアフリカ諸国が続く。152位が中東のイエメン共和国だ。
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 出典:World Happiness Report 2018 | TNPSC Thervupettagam

日本の幸福度の推移
下の図はNHK NEWSのツイッター投稿だ。これによると2004年度には6.5だった幸福度が2009年には5.85ぐらいまで一気に下がった。2011年には6.26ぐらいまで上昇したが、その後低下し、低迷している。思い出すのはやはり2008年9月のリーマンショックと、2011年3月の東日本大震災だ。しかし、なぜリーマンショックの後に幸福度が上がったのだろうか?不況で、自宅に戻り、出生率が増加したらしいが、人間的な生活に戻ったのか。新聞やテレビでは「いざなぎ景気」を超えて、戦後2番目の好景気と発表しているが、全くその実感がないと感じるのは自分だけだろうか。
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 出典:けん on Twitter: "日本人の主観的幸福度の推移(World Happiness Report 2018)… "

GDPと幸福度の相関関係
下のグラフは、主要国における散布図だ。縦軸は人生の満足度で10が最高だ。横軸は一人当たりのGDPだ。日本は一人当たりのGDPでは上位だ。フランスは同じ程度の購買力だが人生の満足度は日本より高い。米国は日本の右上だ。日本人の人生の満足度と同程度の国は、タイ、パラグアイパキスタンタジキスタンだ。日本はどこに向かうべきなのだろう。
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 出典:Happiness and Life Satisfaction - Our World in Data

まとめ
なぜ日本人の幸福度は低いのか。GDPを高めることは必要条件の一つかもしれないが、それだけではダメだ。では何が不足しているのか。企業は、生き残りをかけて事業改革を進める必要がある。企業経営で解決できることと、国家施策として対応すべきことがある。どうすれば日本人の幸福度を高められるのだろう。また、それ以前に日本の幸福度を阻害している要因はなんなんだろう。ただ、MBAの研究テーマなので、あまり精神論に走ってもダメだろう。タイトルでネタバレだけど、次回からは、日本人の幸福度を高め、企業もハッピー、国家もハッピーになるような方法がないものかを考えて、それを提案してみたい。

2020年のスマートデバイスの予想(笑)

はじめに
モバイルデバイスの進化は小型、軽量化、薄型、大画面化だ。下の図からは第一世代から第二世代、第三世代、そして第四世代と端末がどのように進化したかは一目瞭然だ。第五世代のデバイスは一体どうなるのだろう。
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 出典:シーテック2016

想定される方向性
1.大画面化
モバイルデバイスの進化の一つは高解像度化と大画面化だ。しかし、同時に小型軽量薄型化も求められる。下の表は、iPhone 7からiPhone Xまでのサイズや重量、解像度などを一覧にしている。今後も解像度化は進むだろう。4Kや8K対応になるのも時間の問題だろう。しかし、画面サイズを単純に拡大すると、端末のサイズが大きくなり、操作性が悪くなる。
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 出典:サイズモード! iPhone 7/8/Xの大きさと重さを比べてみますよ | ギズモード・ジャパン

2.2つ折りタイプ
この数年の間に登場すると想定されるのは折りたたみタイプだ。年内にも発売かと噂されたサムスンのGalaxy Xはどうしたのだろう。噂のファーウェイやZTEなども商品投入を考えているように報道されている。アップルはいつ出すのか。そのあたりを少し調べてみた。

2.1 サムスン
色々な噂があるが、年内販売はなさそうだ。2019年1月のCESか、2月のMWC2019あたりに発表することをターゲットにしているのかもしれない。どんな風に折り畳むのだろうか。楽しみだ。ただ、初期不良とかが心配だ。品質面の問題解決を今は必死にやっているのだろうか。
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 出典:こっ…これは?噂の“折りたたみスマホ”『Galaxy X』まとめだー! | 8vivid

2.2 ファーウェイ
噂のファーウェイも折りたたみタイプには熱心に取り組んでいるようだ。本年3月には、折りたたみ式のHuawei電話の特許図が登場したという。Yu Chengdong氏は、数ヶ月以内に発表されると示唆しているようだ。逆風の中どんな新商品を発表するのだろうか。興味深い。
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 出典:Huawei Could Release A Foldable Phone Soon

2.3 ZTE
ファーウェイに負けるなと頑張っているのがZTEだ。噂の新モデルは、折りたたみタイプだ。ZTE Axon Mは、山折タイプだ。スクリーンを閉じると厚さは12.1mmとなるので、ちょっと厚っぽい。開発速度を優先しているのかもしれない。
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 出典:ZTEの折りたたみスマホはあのゲーム機にそっくり!? - iPhone Mania

2.4 Apple
個人的には、いつ折りたたみタイプのiPhoneが出るのかに関心が集まる。中韓のメーカーが折りたたみタイプを投入してもそれは目新しいだけで本当に使い勝手の良さを極めたものとは思えない。一方、アップルは先行他社が発表してから数年遅れぐらいで投入することが多い。米国メリルリンチ等の報告では、アップルのサプライヤ数社は早くも折りたたみタイプの製造技術に取り組んでいると報道している。どんな製品に仕上がるのかは今後のお楽しみだ。下のような案もあるようだ。今のiPhone Xはあと2年ほど使って、2020年ごろには折りたたみになっていると嬉しい。
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 出典:Is Apple set to unveil its first FOLDABLE smartphone? | Daily Mail Online

3. スマートグラス
VRやARの実現デバイスとして注目されているのはスマートグラスだ。5年前にGoogleGoogle Glassを発表した時はセンセーショナルだったが、かなり実用レベルまで改善されてきている。ただ、メガネタイプなので、重量と電池のトレードオフが課題だ。軽さを重視するタイプと長時間利用を重視するタイプで二極化するだろう。下の図は、CES2018でVuzix社が発表したスマートメガネだ。先日もある展示会でスマートメガネを試着したが、意外と軽くて便利だと思った。視線を右上に移すとサブ画面が見える。真っ直ぐ前を見たり、下を見てる時はサブ画面が気にならない。歩きスマホは危険だけど、スマートグラスとヘッドセットで映画とか見ながら散歩するのはどうだろう。ミュージックビデオならどうだろう。お仕事をするときにサブ画面で何か参考情報をチェックできると便利かも。講演するときに、投影しているスライドをサブ画面でチェックできると便利だ。これから色々な活用方法が開発されるだろう。
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 出典:Smart glasses are coming this year, and I’m not ready

4. ゴーグルタイプ
自分は残念ながらまだ購入していないけど、ゴーグルにスマホをセットすると、大画面の映像や3D映像を楽しむことができる。映像自体はスマホで再生するタイプなので、ゴーグル自体は2000円でお釣りが出る。問題はコンテンツがまだまだ少ないことだろうか。近視や遠視の人でも大丈夫なのだろうか。映画とか動画を自宅でゆっくりと視聴するのであれば、大画面のテレビで見るよりも、ゴーグルタイプの方が大迫力かもしれない。
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 出典:https://tabkul.com/?p=176769

まとめ
5Gが開始する2020年にはスマートデバイスはどうなっているのだろう。ダブル画面タイプのiPhone W(仮称)とかが発売されているのだろうか。それとも軽くてカッコいいiGlass(仮称)が出回っているのだろうか。ゴーグルタイプがもっと進化しているのだろうか。あと2年だけど、予測がつかないのがこの世界の凄いところかもしれない。しかし、ここ数年のうちにびっくりするほどの進化を見せるのだろう。今回は含めなかったけど、癒し系ロボットが2020年のスマートデバイスとして急速に普及している可能性もある。将来が本当に楽しみだ。

以上